コルチゾールの影響をもっとも受ける“ある部分”

コルチゾールは、モチベーションを下げ、記憶力を悪化させます。体内でも脳の海馬は、もっともコルチゾール受容体が多い部位です。つまり、もっともコルチゾールの影響を受けやすい部位、ということ。

海馬は、「記憶」を司っています。そのため、コルチゾールが上がると、記憶力がものすごく低下します。なぜかというと、嫌な出来事を忘れさせるためです。

子どもの頃に親からひどい虐待を受けていた。しかし、大人になって、それをまったく記憶していない、ということがよくあります。それは、コルチゾールによって記憶が障害されるから。そうした虐待児には、「海馬の萎縮」が観察されます。

また、コルチゾールが分泌されると、意欲、モチベーションが低下します。長期にわたって続くと、うつ病の原因にもなります。

なぜならば、今「つらい」「苦しい」ことをやっているわけですから、それをやめさせようとするのです。そのまま無理して「つらい」ことをやり続けると、ストレスで病気になるかもしれませんから。

ということで、「つらい」「苦しい」が続くと、集中力、記憶力、意欲が低下します。言うなれば、脳に霧がかかったような状態です。

「楽しい」はアクセル、「苦しい」はブレーキ

ジョンズ・ホプキンス医学校の研究で、認知症ではない健常者2231人(平均年齢49歳)に、心理学的試験、記憶・思考スキルに関するテスト、MRIによる脳のスキャン、血中コルチゾール値の計測を行いました。

その結果、血中コルチゾール濃度が高い人々は、正常な人と比べて、記憶力、思考力のテストの結果が有意に低くなりました。また、血中コルチゾール濃度が高い人々は、脳の容積が縮小していることが確認されたのです。

継続的なストレスにさらされてコルチゾール濃度が高まると、記憶力が下がり、さらに脳の萎縮まで引き起こされるのです。

わかりやすく言えば、「楽しい」と能力は2倍になり、「苦しい」と能力は半分になる、(数値は、樺沢の実感値)ということ。

「楽しい」はアクセルであり、「苦しい」はブレーキです。

スーパーマンのような状態で仕事に取り組むのか。頭に霧がかかった状態で仕事に取り組むのか。どちらが、効率的に仕事ができますか?

そして、あなたはどちらの状態で仕事をしたいですか?

写真=iStock.com/dimarik
※写真はイメージです