1.社員教育の手厚さ

量販店には家電メーカーからのヘルパー(派遣スタッフ)がいる。その理由は、自社商品の販売促進をはかり売り上げを増やすためだ。

メーカー各社は高度化した家電の最新商品の知識を持つ販売員を売り場に送り込んできた。以前からある商習慣の一つであり、そのものには問題はない。

このヘルパー制度は、ノジマ以外の大手量販店はどこでも導入している。ある家電量販店では、8割をヘルパーが占める売り場さえある。夏前のエアコン、年末のプリンター売り場の繁忙期などでは、社員よりヘルパーが多くなる場合もある。

ヨドバシでは売り場の社員比率が高い。客から言われた問題点や疑問点を朝礼や終礼で話し合い改善したり、取り扱う商品の勉強会を毎週のように実施し、社員の質を上げている。

ヨドバシの地方進出で驚いたことがある。出店前のスタッフ研修を東京の店舗でおこなっていたことだ。

通常は現地採用された社員や異動、応援で駆けつけた社員が、新規オープンの店舗で研修するパターンが多い。

ところがヨドバシでは移動経費をかけて、東京でビジネスホテルやウィークリーマンションに滞在させ実地研修をおこなっていた。“ヨドバシ・イズム”を植え付けてから、現地に送り込んでいたのだ。

ヨドバシでは「投資」を大切にしているからこそ、このようなコストのかかることができるのだ。

2.接客力の高さ

ヨドバシは各量販店の中でも価格が高い傾向にある。それでも顧客満足度で第1位を長い間キープしている理由は、高い「価値」を提供しているからだ。新商品の投入が早く、商品の陳列も見栄えがよく、品ぞろえも豊富である。商品を説明しているPOP(購買時点広告)は、他の量販店が真似をすることもある。さらには毎月売り場レイアウトの変更をおこない、来店客に飽きさせないようにしている。

また、ヨドバシは店員が積極的に声をかけるのではなく、客が話す悩み事に対して親切丁寧に対応して的確に答えてくれる。「普段はどういう使い方をされていますか?」と聞くことで、まず初心者、中級者、プロ向けのどのニーズがあるのかを把握していく。そして接客を通じて、その顧客にあった商品を提案、つまりコンサルティング・セールスをおこなっている。

初心者向けの商品を買った客は、後日中級者として売り場に戻ってきて新たな商品を購入してくれる。

ヨドバシが心がけているのは「きめ細かな接客」であり、「高い価格の商品を買ってもらうこと」ではない。