「安さ」を売りにすると他店に客をとられる

ヨドバシでは客のニーズに応じたセット販売にも力を入れている。液晶テレビであれば、接続用HDMIケーブルという付加価値の高い商品がある。客との会話で音にこだわることがわかれば、スピーカー・システムの提案がされる。愚直に顧客視点で商品を薦めることで、売り上げが上がるのだ。

一方、他の販売店が取り扱いしているのは「価格」だ。安ければ買うが、高ければ他店に行ってしまう。加えて、ショー・ルーミング(売り場で実機に触れたり店員から情報を教えてもらうが、その場では買わず、安いネット通販で店頭より安い価格で購入すること)も起きやすい。

なお、「ゴールドポイントカード」で初めてポイントカード・システムを業界で採用したのは有名な話だ。不定期でポイント13%還元などポイント・アップをおこなっている。ポイント・サービスで優良顧客を囲い込むことで、リピーターを増やしている。

3.ネット販売サービスの充実

いまや家電の4割がネット販売である。ヨドバシ・ドット・コムでは、東京23区エリアと一部都市で、最短2時間30分で届ける「ヨドバシエクストリーム」(以下「エクストリーム」便)を導入した。これは商品のピックアップと梱包に30分、配達に2時間を想定している。

全品が送料無料で、かつ年会費無料。店頭とネットで値段は一部の商品を除き同じにそろえている。お店のバーコードを読み取れば、ヨドバシの通販サイトで購入できてしまう。ターミナル駅の店舗での受け取りも可能であり、秋葉原、梅田、博多などは24時間対応している。

店頭で接客を受け、注文は自社のWEBサイトでしてもらうことで、ショー・ルーミング化は起こらない。

スマートフォンを使いオフィスの外でコーヒーを飲むビジネスパーソン
写真=iStock.com/AzmanJaka
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それにしても、なぜ送料無料ができるのか。

それはイニシャル・コスト(初期投資)がかかっても、ランニング・コスト(継続する費用)が抑えられればいいという考えからきている。

商品が動かず在庫や保管の時間があると、その分にコストが発生する。回転率を高めることでコストを下げられるのだ。

ランニング・コスト削減という考え方は、ヨドバシが自社の物件や運営にこだわるところにも表れている。長期スパンで経営をおこなうことで、最終的には投資の償却が進み、効率的な自社管理でコストが下がる仕組みである。

エクストリーム便の配達員は正社員か契約社員を起用している。つまり店頭と同じ意識を持ったスタッフが配達をおこなっているのだ。

ヨドバシはLTV(ライフ・タイム・バリュー:顧客生涯価値)理論を展開している。

LTV=購買単価×購買頻度×継続期間

これは一人の客がその長い生涯を通じて、一つの企業にどれくらいの価値(利益)をもたらすのか、顧客との関係性となるリピーターを重視するマーケティング戦略の考え方だ。