ピーチ広報室課長代理の長谷川遥氏にこの路線の開設理由を聞くと、「2つの異なる風土や文化の違いを結ぼうと考えました。両地区の避暑や避寒で、年間を通しての利用が望めることも大きいです。この路線はANAも飛んでいますが、同社から移管された路線ではなく、当社が独自に開設したものです」と聞かせてくれた。

新たな需要を開拓する実験的路線と言ってもいい。試しに飛んでみたら、案外利用客がいたという結果が導き出されたと想定される。それが証拠にコロナ禍でも運休せずに毎日1往復が継続して飛んでいる。

LCCとは本来、需要の見込める都市間の高頻度輸送で成り立つビジネスモデルだ。そして、格安運賃を提供するために複数空港のある大都市では一般的に不便と言われる中心部から距離のある第2空港を使う。また、大量一括輸送ではなく、比較的小型の航空機で頻度が高く、利便性を上げて利用者を誘引するのがセオリーとなる。

筆者撮影
那覇空港で見送りを受けて出発へ

新規路線を作る余裕はないはずだが…

コロナ禍で軒並み乗客が減少し、特に2020年度の決算は航空会社にとって目を覆いたくなるような大赤字が並んだ。ピーチは2020年度の旅客数は208万人にまで落ち込んでいる。2019年度の728万人に比べて実にマイナス71%になる。ピーチには常識外れのような新規路線を飛ばしている余裕はないはずだ。

確かに、緊急事態宣言の発出や感染者数が急増する状況下では乗客数は激減した。だが、2021年秋のように感染状況が落ち着けば乗客はすぐに戻ってきた。2021年度の第3四半期で292万人の数字は2020年度同期の158万人に比べて85%旅客数は増えている。

経営企画部部長の福島志幸氏は、こう答えてくれた。

「当初はコロナ禍の収束を予測してインバウンド用に新規就航を決めましたが、このように長期になるのは予想外でした。余裕はないけれど、路線縮小を判断するのは経営上も否定的です。なぜなら需要は必ず戻る。路線を供給すれば需要が生まれる。われわれは低運賃だから乗ってくれる需要層をつかんでいます。もともと乗り継ぎで利用されていた層が一定数おり、低運賃の直行便を用意したことでの流入を想定していました」

実際、3月中旬に新千歳空港の那覇行きの搭乗待合室で12組の乗客から話を聞くと、福島氏の見解が決して的外れではないことが分かる。