リーダーの戦争への姿勢と支持率は明らかに連動する
よく言われることだが、この戦争の前まで、ゼレンスキー大統領はウクライナ国民からそれほど人気はなかった。今年2月までは支持率は41%だったが、ロシアが侵攻してきて徹底抗戦をすることで91%と爆上がりした。これは、対するプーチン大統領も同じで、これまでクリミア半島などで戦争を仕掛けるたびに支持率をアップさせている。
これは裏を返せば、国際社会の圧力などで、軍を撤退させたり、和平交渉を進めたりすると、ゼレンスキー大統領やプーチン大統領の支持率はガクンと下がって最悪、愛国的な政治勢力から批判されて権力の座から引き摺り下ろされる恐れもあるからだ。
つまり、一度始まってしまった「正義の戦い」が、自国の国民が犠牲になってもなかなかやめられないのは、リーダーたちの「保身」もあるのだ。
先ほども申し上げたように、ロシアは日本を完全に「敵国」扱いして、北方領土で軍事力を行使してくる。あちらからすれば、「先に挑発をしたのはそっちだろ」という言い分だ。
となると、日本政府としては、これに毅然とした態度で臨まないといけない。「まずは話し合いを」なんて弱腰なことを言うと、国民から「そんな生ぬるい事を言っているからナメられるのだ! ゼレンスキー大統領の爪の垢を煎じて飲め」と突き上げられて、支持率も低下していってしまう。
戦争で犠牲になるのは指導者たちではなく国民だ
こうなると、「日本の領土は死んでも守る!」「核共有も真剣に議論すべき!」「敵基地を先制攻撃だ」と威勢のいい事を言えば言うほど支持率が上がる。そうなると、プーチンや習近平と同じで、権力を揺るぎないものとするためにもっとナショナリズムを刺激するように周辺国への対応が過激化していく。ここまでくると、武力衝突まであと一歩だ。
よく社会が右傾化していくことをじわじわと広がっていくことを、「軍靴の音が聞こえる」なんて表現をするが、実は「正義の絶叫が聞こえる」の方が正しい。
そして、この「正義の戦い」で犠牲になるのは、指導者たちではなく国民だということも忘れてはいけない。