医学界の幹部は製薬会社に「頭が上がらない」

また、会場には製薬会社や医療機器メーカーのブースが出ます。そこにパンフレットや医療機器の実物などが展示されています。つまり、お金やお弁当を出す代わりに、製薬会社は学術集会の会場で、学会に来た医師たちを対象としたプロモーションを行っているのです。

製薬会社は多くの社員を出して、学術集会の運営もサポートしています。さらには、夜のプログラムとして開かれるパーティの費用の一部も製薬会社が負担することがあります。かつては、医師たちにタクシーチケットが配られ、開催地の観光や宿泊の費用まで製薬会社が出すことがあったそうです(現在はガイドラインがつくられ、一定以上の利益供与は規制されています)。

このように、製薬業界の協力なくしては学術集会が開けないほど、各医学会は製薬マネーに依存しています。考えてみれば、これほど特定の業界から多額の利益供与を受けている学問領域は、他にないのではないでしょうか。たとえば、人文科学系や社会科学系の学術集会が、高級ホテルで行われているという話は聞いたことがありません。

医学会も、もっと質素な会場で、手弁当で行えばいいと思うのですが、いったん豪華にしたものを戻すことはできないのかもしれません。いずれにせよ、医学界の幹部たちも製薬会社にお世話になっているので、「頭が上がらない」のが実態だということです。

大学教授や有名医師が新薬の販促セミナーで講師に

製薬会社が医療界に支払うお金の3つ目が「原稿執筆料等」です。新薬のパンフレットなどの原稿執筆料・医学監修料などのほか、セミナーの講師料、研究開発のコンサルタント料などの名目で、主に医師個人に対して支払われます。

2018年の1位は第一三共で約24億円、2位が中外製薬で約13億円、3位が大塚製薬で約13億円、4位が武田薬品工業で約11億4000万円、5位がMSDで約10億6000万円です。アストラゼネカ社は11位で約9億円、ファイザー社は14位で約8億円でした。

このお金は、どのように支払われるのでしょうか。製薬会社は新薬を出すと、その販売を促進するために、その薬に関連する学会や地域の医師会等との共催で、医師向けのセミナーを全国各地で開催します。この際に講師として呼ばれるのが、その分野で権威とされる大学教授や有名医師です。