アンモニアを「ガラパゴスな技術」に終わらせない

「(オーストラリアのように)水素が地産地消で使えるところは、わざわざアンモニアを使う必要はありません。諸外国でアンモニアが注目されない理由はここにあります。そして一度水素から作ったアンモニアを、輸入後にもう一度水素に分解するよりは、直接燃やしたほうがロスは少なく、低コストで環境に良い。ボイラー式の発電所であればアンモニアを上手に燃やせると踏んだので、まず直接燃やすことにしました」と奥田は話す。

しかし、奥田も認めているように、現状ではクリーンエネルギーの文脈で、アンモニアに着目している国は少ない。このため、「石炭を延命させるための方策」「ガラパゴスな技術」という指摘も出ている。カギを握るのは、既存の発電設備を生かしたまま、いかに世界のCO2削減に貢献していけるかということになりそうだ。

特に、日本と同じく再エネの適地が限られ、まだ石炭火力への依存度が高い東南アジア諸国へ展開することで、「アジア諸国でタッグを組んで、アジアのやり方として発信していきたい」と奥田は説く。

火力大手のJERAが脱炭素の先頭に立つ狙い

もう一つ、アンモニアの導入が選択肢に入った理由には、大気汚染物質である窒素酸化物の除去技術において、日本がトップクラスを誇るという背景もある。NH3であるアンモニアを燃やす(O2を加える)とNOx(窒素酸化物)が出ることが、アンモニアを燃料として使う場合のネックになっていたのだが、その排出量を「欧米の10分の1以下に抑えられる世界一の技術が日本にはある」(奥田)のだという。

森川潤『グリーン・ジャイアント』(文春新書)

アンモニアの挑戦はまだ始まったばかりで、これから2050年にかけて、どこまで実用化が進むのかは不透明な部分も大きい。ただ、火力発電の一大企業であるJERAが、日本のエネルギー業界では真っ先にカーボンニュートラルへと舵を切り、自ら新たなモデルを作りに行っていることは、日本では稀有ともいえる大きな一歩だ。

「我々は自らゲームのルールを作っていく存在になっていきたい。人がやってから後追すると、結局は、他の人が作ったモデルの上で仕事をすることになり、ビジネスチャンスを大きく損ねることになる。自分たちで新しいビジネスモデルを作って提示をして行くことが非常に大事です。だからこそ、リーダー的な存在になるために、いち早く手を打っていきたい」と奥田は力を込めている。

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