CO₂を出さないアンモニアと水素で火力発電

「現在の火力発電は、燃料に石炭を使うものとLNGを使う2種類があります。石炭を使う発電所は『ボイラー型』、LNGを使う発電所は『タービン型』と呼ばれていますが、我々が目指すのはボイラー型発電所の燃料を、石炭からアンモニアに変えていくことですさらに、タービン型の燃料を水素に変えていく。アンモニアや水素はCO2を出しません。

アンモニア
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これらを石炭とLNGに混ぜて燃やすことで、発電量はそのままでCO2を削減することができます。この組み合わせこそ、最も早くてコストも小さい火力の脱炭素化だと思っています」と、JERAの奥田久栄副社長はその狙いを打ち明ける。

実際、JERAはすでに2021年6月から、愛知県の碧南火力発電所の燃料にアンモニアを混焼させる実証実験を始めており、2024年度中に20%へ混焼割合を引き上げることを目指している。そして最終的には、2050年までにアンモニアだけを燃やす「専焼」につなげて、CO2排出をゼロにしたい考えだ。その過程で2030年までに、非効率な石炭火力をすべて停廃止するという。

水素だけでは輸入依存から抜け出せない

先述の通り、アンモニアの化学式はNH3であり、水素(H)を含むことが特徴だ。このため、政府の戦略では「水素・アンモニア」と一つの括りで紹介されることも多い。欧州や中国が力を入れる水素ではなく、あえてアンモニアを本命視する背景には、水素という新しいエネルギー資源においても日本は「輸入国」にならざるを得ないという事情があるからだ。

水素は、現在ブルー水素やグリーン水素といった区別がされており、今後は100%再エネから作られる「グリーン水素」が主流になってくる。

しかし、前提条件として、再エネによる発電量が大きく余っていないと、通常の電力需要を賄った上で水素の製造に振り向けることができない。このため、水素生産地として有力視されるのはノルウェーやオーストラリアなど、広大な敷地を背景に再エネが余る国々だ。

一方で日本は適地も少なく、再エネの導入率を上げるので精一杯のため、結局は水素も輸入に頼ることになる。しかし、実は水素を輸送する手段はまだ確立されていない。そのため、水素を窒素と化合させてアンモニアに変えた上で輸送するというのが、現実的な選択肢なのだという。