いずれにせよ、ヨーロッパ発の脱炭素化の流れは、その方向性自体は堅持されるとしても、その具体的な手段についても早々に修正することになりそうだ。

当然、日本も脱炭素化の道のりに関して見直しを余儀なくされるだろう。CO2実質ゼロ目標の年限を2050年に据え置くとしても、再エネ拡充や原発再稼働といった方向転換はあり得るだろう。

自動車に関しても、日本はそもそも電動車という定義を用いて、その中にEVのみならずHVやPHVを含めていた。日本もまたEVの普及を図っているが、そのスケジュール観に関しても見直しを余儀なくされる可能性が出てきた。

「ヨーロッパの脱炭素戦略」はどこで道を誤ったのか

戦略を立てる際には、その目標をどこに定めるかが問題だ。それに、その目標を実現するためにどのような手段を取るかも問われてくる。

EUが掲げた脱炭素化戦略は、目標と手段の両面で野心的だった。そもそもの環境意識の高さに加えて、グローバルなルールメイカーとしての復権を目指そうとするEUの姿勢が、そうした野心につながった。

とりわけ脱炭素化の手段に関して、EUはもっと現実的なアプローチで臨む必要があったのだろう。特にEUは石炭火力の廃止に躍起となっていたが、石炭はヨーロッパの中にも多く埋蔵されている希少な鉱物資源である。最新の技術を使えば温室効果ガスの排出量は抑制できるし、ロシア産の天然ガスに対する依存度を減らすことができるはずだ。

エネルギー政策は安全保障政策そのものと言われる。過度に特定のエネルギー源に依存することは、リスクを集中させることにもつながる。様々なエネルギーの活用を検討し、バランスを取ることが重要だ。

ヨーロッパはエナジーミックスの在り方を再考せざるを得ないし、日本もまた早急にエナジーミックスの在り方を考え直す必要があるだろう。

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