「挑戦」は根本的な解決にならない

ひとつは現状を打破するためのもの。現状からの脱出を意図した挑戦だ。退職からの転職や独立起業がこれに当てはまる。

もうひとつは安定した現状をさらに安定させるための挑戦だ。現状を土台に安定的な発展を意図した挑戦になる。社内新事業の立ち上げ、組織改革がこれになる。現状がうまくいっていないときは前者、うまくいっている状況にあるときは後者の挑戦を選ぶことになる。

だが、こうした挑戦が飽きの問題解決になるだろうか。ならない。まったく異なる職業に就くことをのぞけば、一時的な解決にしかならない。

同業他社への転職や同業界での独立であれば、当初は新鮮な気持ちで「挑戦したかいがあった」という気分に浸れるが、仕事が落ち着いてくればこれまでの仕事の違うバージョンをやるにすぎない。

また、安定的な状況の発展を意図した挑戦も、「新規事業といっても同じ会社の仕事なのだな」と慣れとともに違うバージョンの仕事をやっていることに気付いてしまうのである。

充実した働き方のヒントは「バットマン」にある

結論からいってしまえば、違うレールを走ろうとする転職や独立といった挑戦も、既存のレールを延長するような安定的な発展を狙った挑戦も、飽きや慣れといった問題の抜本的な解決にはならないのである。

その結果、転職を繰り返したり、社内で事業計画を立て続けたりするような地獄に陥るのだ。

なぜか。理由は簡単だ。どちらも一本のレールを進んでいるからである。

一本のレールではトラブルがあったら脱線して終わりである。解決するためには、レールを複線化して、適宜通りやすいレールを選択するようになれば、最初のレールも後から増設したレールもいつまでも新鮮でいられる。バランスをとって進めるようになる。

レールだと抽象的すぎるのでアメコミのヒーロー『バットマン』を例にしよう。

主人公ブルース・ウェインが仕事をしている時の姿が本来の僕らの姿だとする。ブルースが普段実業家として順調なのは夜な夜な趣味で悪人をぶん殴っている「バットマン」という裏の顔があるからだ。そして「バットマン」が安心して真夜中に悪人をボコれるのは、昼の顔実業家ブルースの安定した生活があるからである。

つまり、ブルースとバットマンという2つの顔それぞれが互いを支えているのである。僕らも働きながらこのような生き方ができれば、無理な挑戦をすることなく、充実した働き方ができるようになるだろう。

とはいえ現実問題としてバットマンのような別の自分を持つのは至難だ。悪人をボコるにはバットスーツを買う財力と強靭な体力が必要になる。僕が経験で知っている別の自分を持つ方法は「書くこと」だ。書いた文章をネットに公開することだ。SNSでもブログでもいい。とにかく思うがまま書いてみる。