「まさか郵便局員が不正を働くわけがない」信頼を悪用している

企業などが郵便料金を別納した際に、相当額の郵便切手に消印を押す仕組みがあるが、それを悪用し、切手に消印を押さずに転売する手口が全国の郵便局で次々と見つかった。これも長年続く「郵便局員の小遣い稼ぎ」だったのではないかとの見方が強い。あまりにも巨額なものは事件化したが、少額のケースは闇に葬られてきたとも言われている。

郵便局は国の事業だから潰れない――。民営化された後もそう考えている利用者は少なくない。特に高齢者は長年付き合いのある郵便局長や局員に全幅の信頼を寄せている。郵便局で相次ぐ不正も、そうした無条件の信頼をベースに起きている。まさか郵便局員が不正を働くわけがない、という人々の思いを半ば、悪用しているわけだ。そうした過度の信頼が、内部のチェックを緩ませ、悪しき風習として脈々と続いている。

郵便局はちょっとやそっとでは潰れない、という思い込みは局長や局員にもあるのだろう。だから、多少経費を水増ししたり、ネコババしても会社は安泰だと思うのか。郵便局を舞台にした数々の不祥事の根は深い。まさに「郵便局体質」が脈々と引き継がれているのだ。

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民営化は名ばかり、日本郵政株の3分の1は政府が保有

もとは国鉄(JRの前身)にも似たような体質があった。精算窓口でのネコババやカラ出張が新聞を賑わせたものだ。だが、民営化によって誕生したJRは、その体質を一変させた。日本郵政も民営化によってその体質は変わるはずだった。だが、郵政民営化の歩みは鈍い。2007年に日本郵政グループが発足、当初は完全民営化が前提だったが、その後の揺り戻しで、政府は日本郵政株の3分の1超を持ち続けることになった。

民営化した民間会社にもかかわらず、総務省が「監督強化」できるのも、この政府の持ち株と法律で日本郵政を縛っているからだ。持株会社である日本郵政は、今も日本郵便の株式の100%を保有。本来は保有株すべてを売却することになっている「ゆうちょ銀行」の発行済み株式の88.99%、「かんぽ生命」の49.90%をいまだに持ち続けている。つまり、民営化は名ばかりで、事実上、日本郵政グループは国が実質支配しているのだ。

郵政民営化では、銀行業も保険業も民間の企業で十分で、「官業」として国が事業を行えば民業圧迫になると考えられた。だから政府保有株をすべて売らせて、民間金融機関として自立させる道を考えた。