同じ活躍度の投手でも片や2億円、片や4億6000万円の格差
【3】日本プロ野球界=「成果主義」+「年功序列」
日本はアメリカのメジャーのような完全な成果主義ではなく、年功序列的な部分もある。成績が芳しくなくてもすぐに契約を解かれるわけではなく、1~2年の猶予が与えられる温情がある。日本のプロ野球選手の平均選手寿命は9.5年30歳(NPB調べ)だが、長くやっていれば、それなりに結果を残し年俸も上がっていく。
ただし12球団全体の年俸相場に加え、全盛期を過ぎたベテラン選手と実力ある若手選手の間で、いつか「逆転現象」が生じる。例えば、西武の3選手だ。
中村剛也(西武)20年2億円 29位
栗山 巧(西武)20年1億7900万円 39位
中村剛也と栗山巧は同じくキャリア20年。中村は史上15位の442本塁打を放ち、栗山は通算2000本安打を達成している。この2人をキャリア8年で首位打者1度の森友哉の年俸が上回っている。栗山はこれまで年俸2億円前後の年が多かったが、中村は最高4億を超えていた。年俸推移の下降曲線と上昇曲線が逆転した。これも時代の流れだろう。
【4】抑え投手の年俸には、優勝が大きく反映する
増田達至(西武)3億円 9年455試合25勝95H 144S。最多セーブ1、最優秀中継1
益田直也(ロッテ)2億円 10年593試合29勝145H 157S。最多セーブ2
この投手3人は、現役通算の年数、登板試合数が似通っている。中継ぎ投手から抑え投手に昇格し、ホールド数とセーブ数、タイトル獲得の点も似ている。しかし、リーグ優勝がソフトバンク4度、西武2度、ロッテ0度の結果に伴い、22年の年俸に大きく差が出た。ソフトバンク森唯斗は、ロッテ益田直也の実に2倍超の4億6000万円である。プロ野球の世界でも「同一労働、同一賃金」は難しいようである。
【5】「もっともらうべき選手」筆頭は巨人・岡本
この成績で、たったこの年俸か……「もっともらってもいいのでは」と感じる選手もいる。その筆頭は巨人の岡本和真だ。オリックスの吉田正尚と比較してみよう。
岡本和真(巨人)7年3億円13位 582試合586安打、打率.276、135本塁打、410打点
吉田は2021年シーズンに首位打者を獲得(2年連続)し、チームを25年ぶりのパ・リーグ優勝に導いた。その結果、1億2000万円アップの4億円に到達。一方の岡本も4年連続「30本90打点」で、19~20年のセ・リーグ2連覇の原動力となった。
アベレージヒッターの吉田と、長距離打者の岡本では、一概に比較できない部分はある。また、打率は吉田より岡本のほうが5分も低い。だが、岡本には試合の展開を一瞬にして引き寄せる一発の魅力がある。
岡本の2年連続「本塁打王&打点王」は、チームでは1977年王貞治以来実に44年ぶり。右打者では長嶋茂雄もなしえなかった史上初の快挙。つまり松井秀喜、小笠原道大、阿部慎之助、坂本勇人らのMVP選手でもできなかったと言えば、その偉業ぶりが理解できるだろう。何かと注目される球界の盟主巨人において、連続してタイトルを獲るのは至難の業だ。昨オフの契約更改では9000万円アップの3億円だったが、巨人ファンならずとも、もっともらってもいいと感じる人は多いはずだ。