国民にとってもプラスになる

このニュースは、私たちが毎月支払っている電気代とも深く関わっている。

太陽光発電の導入時と同様に、洋上風力発電も当初は政府が電力を買い取る「固定価格買取制度」の導入が目指されている。その財源は、私たち利用者の電気代に含まれる「再エネ賦課金」である。

政府の買取価格が高ければ高いほど、将来にわたっての国民負担が重くなる。そのため、これから大規模な導入が予定される洋上風力の買取価格が低く抑えられたことは、国民負担軽減の観点からも非常に望ましい。

今回、「衝撃の11円台」になったことで、低コスト化の道が確実に開けた。元々、「洋上風力産業ビジョン」において産業界は洋上風力のコストを2030~2035年に8~9円/kWhにする目標を掲げていたが、それも十分射程に入る水準までいきなり価格が下がったのだ。

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ライバルの競合他社にとっては悪夢でしかないだろう。戦略の見直しが求められる。とはいえ、私たち消費者からすればメリットは大きい。

さらにこれまで「再エネ=高い」という認識となっていた日本で、再エネや脱炭素のイメージを覆す好機になるだろう。

洋上風力の先進国、欧州勢を食い止める効果

「衝撃の11円台」の効果はそれだけにはとどまらない。筆者は日本の国富が欧州に流出する抑止力になったという意味でも、三菱商事側が今回の入札で果たした役割は非常に大きいと考えている。

前回記事で述べた通り、技術力や実績を武器に欧州勢が日本市場への参入を虎視眈々たんたんと狙っていた。日本の洋上風力市場は政府の大規模投資が確実に見込まれることから、「必ず儲かる」フロンティアだった。

すでに欧州では、着床式洋上風力発電の導入が進み、発電コスト(LCOE)は平均8.6円/kWhという低コストを実現している。その技術力をもって日本市場に参入できれば、高い固定買取価格が設定されると見込まれることから、大きな利益を得ることができる。

実際に、洋上風力世界最大手のデンマーク・オーステッド社をはじめ、欧州企業はこぞって日本に支社を立ち上げるなどして備えていた。今回の三菱商事側による落札は、こうした欧州勢に肩透かしを食らわせる格好となった。

彼らは1kWhあたり20円程度の相場と見込んでいただろうが、急に欧州での価格と同水準にまで下がったのだ。欧州勢の日本市場参入は、三菱商事側の価格を基準に再構築しなければならず、コストを計算すれば当初のうまみは見込めない。