心の傷に気づくことが幸せになる前提条件

では、幸せな子ども時代を過ごし、基本的信頼感を得た人であれば、不安や問題をまったく抱えずに人生を歩むことができるのでしょうか? いいえ、そうではありません。完璧な親や完璧な子ども時代などあり得ないため、そのような人の「内なる子ども」も、かすり傷ぐらいは負っているからです。

シュテファニー・シュタール著『「本当の自分」がわかる心理学 すべての悩みを解決する鍵は自分の中にある』(大和書房)

「内なる子ども」は、親との経験からポジティブなことだけでなく、必ずネガティブなことも刷り込まれているのです。そして、わずかなネガティブな刷り込みでも、それによって後の人生で問題が起こってきます。たとえば家族以外の人を信じることができなくなったり、大きな決断を避けるようになったり、抜きん出るよりも実力を発揮しないままのほうがいいと思うようになったりします。子ども時代のネガティブな刷り込みは、自分自身に制限をかけて、自分の成長と他者との関係を妨害するものなのです。

つまり、ほぼすべての人に次のようなことがいえます。自分の「内なる子ども」と向き合い、友情を結ぶことで初めて、自分がどれほど強い願望を持っているのか、自分がどれほど深い傷を負っているのかがわかります。その心の中にある傷を受け入れ、ある程度まで癒すことができれば、自己価値感が高まり、最終的に「内なる子ども」が心の拠りどころを持てるようになるのです。

これは、幸せな人間関係をより平和的に、より友好的に築くための前提条件となります。また、自分に有益ではない関係や、それどころか病気にさせるような関係から解放されるための前提条件でもあります。

関連記事
メンタル不調のときにまず食べるべき最強で手軽な「うつぬけ食材」
ブッダの教え「絶対に付き合ってはいけない4種類の人、付き合うべき4種類の人」
「自己肯定感の低い人たちへ」夏目漱石が100年以上前の大学生に伝えたこと
暴力のトラウマは、人を鬼に変えることがある…『鬼滅の刃』が大ヒットする日本で精神科医が考えたこと
「学校に行きたくない」泣き叫ぶわが子に母親がとった"神対応"の中身