※本稿は、シュテファニー・シュタール著、繁田香織訳『「本当の自分」がわかる心理学 すべての悩みを解決する鍵は自分の中にある』(大和書房)の一部を再編集したものです。
子どもの頃の経験が今も影響を与えている
誰もが、「自分の身が守られ、安心でき、快く受け入れられている」と感じられる居場所を必要としています。
子どものころに自宅がそのような場所であったら、それに越したことはありません。親から受け入れられ愛されていると感じている子どもは、「温かい家庭」という居場所を持っています。その子どもにとって、温かい家庭はまさに“リラックスでき、ありのままの自分でいられる場所”であって、大人になってからもいつでも優しく迎え入れてもらえる「心の拠りどころ」になるのです。
また、親から受け入れられ愛されていると感じている子どもは、「自分が生きているのは基本的に良いことだ」と思うようになり、大人になってからもこの感覚を持ち続けることができます。そのような人は、「この世界の中で、そして自分の人生において自分は守られている」と感じるのです。すると、自分を信じ、他者を信頼できるようになります。
この感覚は、「基本的信頼感」と呼ばれています。基本的信頼感は、心の拠りどころのようなものなのです。
とはいっても、子どものころに嫌な経験ばかりして、それがトラウマになっているという人も少なくありません。また、不幸な子ども時代を送っていても、その経験をなかったことにしようとしていたために、ほとんど覚えていないという人もいます。一方、自分の子ども時代は至って“普通”だった、あるいは“幸せ”だったと思っていても、じつはそう思い込んでいるだけという人もいます。
このように、不安や拒絶を感じた、子ども時代の経験をなかったことにしていたとしても、また、大人になってからそうした経験を軽く見るようになったとしても、これらの人たちの基本的信頼感がきちんと育まれていなかったことに変わりはなく、そのことが日常生活に表れてきます。