“ゼロコロナ対策”の代償は大きい

もう一つは、新型コロナウイルスの感染再拡大による“ゼロコロナ対策”の徹底だ。それによって動線が寸断され個人の消費、固定資産投資、鉱工業生産が減少している。例えば西安市ではロックダウンの実施によって市内外の動線が寸断された。その結果として物流が停滞し食料不足が発生した。それは経済成長にマイナスだ。中国国内では散発的に感染が発生しており、北京冬季五輪や秋の党大会開催に向けてゼロコロナ対策は強化されるだろう。

その結果として想定されるのが、動線が寸断される都市が増えて物流の停滞など供給制約が深刻化する展開だ。供給制約は企業のコストを増価させ、卸売物価の上昇につながる。

それによって消費者物価が上昇する可能性も高まる。短期間で中国の不動産市況が落ち着き、感染再拡大が収束するとは考えづらい。物価がさらに上昇すれば中国の国内需要にはかなりの下押し圧力がかかるだろう。

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地方政府の債務増加も懸念される

当面の間、中国経済は減速から抜け出せず、世界経済にマイナスの影響が波及するだろう。波及経路の一つは、債務問題を背景とする資金流出だ。不動産業界での債務問題に加えて、今後の中国では地方政府の債務増加も懸念される。昨年12月の中央経済工作会議で共産党指導部は経済の安定を実現するために、地方政府に前倒しで経済対策を実施するよう求めた。共産党政権の景気減速への危機感は強まっている。

その一方で、不動産市況の悪化によって歳入が減少し、インフラ投資の実行が難しくなる地方政府は増えていると考えられる。景気対策を打ち出そうにも、地方政府の対応余地は狭まっている。その状況下で景気の安定を目指すために、共産党政権は苦肉の策として地方債発行枠の追加的な引き上げを余儀なくされるだろう。

経済成長率が低下する中での債務残高の増加は中国の信用リスクを上昇させ、海外への資金流出圧力を強める要因となるだろう。そのタイミングで米国の利上げが実施されれば、中国の債務問題(灰色のサイ)の懸念が高まり、世界的にリスクオフが進んで株価は調整する可能性がある。