指導の仕方を変えて、再び勝てるようになった

大学に入学してくる選手たちの“質”は徐々に変わってきている。同じ指導をしても、駒大は勝てなくなった。しかし、大八木監督は柔軟に対応する。時代にマッチした指導をするように切り替えたのだ。昔と今で選手への声かけはずいぶん違うという。

13年ぶり7度目の総合優勝を果たし、記者会見する駒大の大八木弘明監督=2021年1月3日、東京都千代田区[代表撮影](写真=時事通信フォト)

「コーチ就任当初は今のようなやさしいことは言ってないですよ。『バカたれ、このやろー』『やめちまえ~』とか始まっていたよね(笑)。でも、今は叱り方が全然違います。20年前と時代が違いますし、選手の性格・気質も変わってきました。昔は指導者からの一方通行でも選手に伝わっていた部分があるんですけど、今では通用しません。昔は選手たちがいい意味で反発してきて、『なにくそ』という気持ちがありました。最近は反発力がない選手が多いですよね。強く言うと、シュンとなってしまいます」

また体育会系特有の組織づくりを見直したことで、1年生が活躍できるようになったという。

「会社のように3カ月間は『研修期間』だと思っていたので、1年生は4~6月は丸刈りにさせていたんです。当初はいい感じできていたんですけど、途中から『丸刈りなんてやっていられない』『丸刈りにさせられるチームなんて行きたくない』という選手が出てきたんです。7~8年くらい前にやめさせました。そうしたら好選手が入ってくるようになりましたからね(笑)。時代だと思いますけど、チームのルールも少しずつ変えていきました」

寮の掃除は下級生が担当していたが、今は学年に関係なく全員でやっているという。1年生の負担を減らして、走りやすい環境、学校に行かせやすい状況をつくるようになった。そのなかで強くなったのが、絶対的エースである田澤廉(3年)や鈴木芽吹(2年)らだ。

昨季は全日本大学駅伝で6年ぶりの優勝を飾ると、箱根駅伝は13年ぶりの総合優勝。今季も11月の全日本大学駅伝で連覇を果たした。駒大は「令和の常勝軍団」への道を突き進んでいる。

まもなく始まる箱根駅伝。今年もアグレッシブな大八木監督の姿を見ることができるだろう。しかし、「男だろ!」の声は決して連発しているわけではない。「ここぞ」というときに計算して発しているのだ。

大八木監督の意外な一面を知れば、駒大の“強さ”を理解できるのではないだろうか。

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