過剰なストレスによって老化細胞に変化する場合も
老化細胞のなかには、そうやって分裂の上限に達して寿命が尽きた細胞のほかに、過剰なストレスなどによって、そこまで分裂を繰り返していないにもかかわらず、活動を完全に停止して老化細胞になってしまうものもあります。ストレスの多い生活をしている人が老けてみられるのは、そういう理由もあるかもしれませんね。
ストレスは細胞を酸化させて老化細胞へと誘導し、老化スピードを加速させてしまうのです。あるいは、がん遺伝子が活性化することで細胞老化が誘導されることも判明しました。このことは、細胞老化が、がん細胞の増殖を抑える役目もあるため、一概に老化細胞を悪者だと言い切れない部分もあります。
これらストレス性の老化細胞は、細胞分裂の上限を終えて自然に老化した細胞と、結果としてとくに違いはないと考えられます。ストレスといえば、紫外線や放射線なども細胞にとってストレスのひとつです。
これらを浴びると遺伝子に傷がつき、細胞の老化を早めることがわかっています。屋外の仕事で年中日焼けしている方の皮膚と、常に日焼けに注意して日焼け止めを塗るなど、UV対策をしている女優さんのような方の皮膚を比べると、どちらも70歳くらいになった時の老化具合には大きな差が出ています。
皮膚のシワというのも、その部分に溜まった老化細胞によって、微小ながら過剰な炎症が起きていることの表れとも考えられます。蓄積された老化細胞が、さまざまなかたちで人の見た目や臓器を老化させているのです。
老化と薄毛は関係ない可能性が高い
シワなどの老化現象は、蓄積した老化細胞によって誘発された炎症が原因ですが、一方で、老化細胞と関係の低いであろう老化現象もあります。その代表的なものが薄毛です。
薄毛は、毛母細胞の働きが抑制されることで毛周期という毛の生え変わりのサイクルが乱れて、毛が太くならず、十分に成長する前に抜け落ちてしまうことで進行します。この毛母細胞の働きを抑制する原因になってしまうのが、男性ホルモンであるテストステロンの存在。
テストステロンは酵素によってジヒドロテストステロンへと変化しますが、このジヒドロテストステロンが毛母細胞の働きを抑制することが知られています。つまり、薄毛自体は、老化細胞の蓄積による炎症が主な原因というわけではなく、男性ホルモンの影響が大きく関与しているのです。
実際、若くても薄毛が進行している人もいれば、年をとってもフサフサの人もいますね。薄毛が進行している人は老化が進行しているかというと、そういうわけではありません。遺伝的に男性ホルモンの影響が強く出ているための症状と考えられます。ですから、老化細胞を除去することで薄毛が改善するかというと、残念ながらその効果は、現状ではわからない、ということになります。