老化細胞を適切に除去できれば、老化の進行は止められる
老化細胞ががん細胞の異常増殖を防ぐのであれば、GLS-1を阻害して老化細胞の命綱を断ち、除去してしまうことが、がんの異常増殖につながってしまうという懸念はないのか、と思われるでしょう。しかし、そんなことはありません。なぜならば、「細胞老化のプロセス」と「老化した細胞」は、切り離して考えるべきものだからです。
細胞を老化させるプロセス自体は阻害すべきではありません。役割を終えた細胞はどんどん老化していく。これ自体は細胞分裂に限界がある以上、必要なプロセスです。一方で、GLS-1は、細胞を老化させるプロセス自体にかかわっているわけではありません。
すでに老化し酸性化した細胞を、GLS-1がグルタミンを代謝する過程で産生するアンモニアによって中和させるというのが、GLS-1による老化細胞“延命”のプロセスです。つまり、GLS-1を阻害したからといって、細胞の“老化自体”がストップするわけではないのです。老化した細胞に、正しく退場してもらう、ということです。
細胞の遺伝子の異常が生じてがん化したとしても、細胞をも老化させることで自身の異常増殖を防ぐ。考えてみれば、よくできた人間の防御プロセスだといえるでしょう。あとは、老化細胞を適切に除去し、新しく健康な細胞が増えていけば、老化の進行は止められるというわけです。