常に自分が弱い側にいると認識しておく

交渉のテーブルのどちら側にいても、自分の方が弱いと思っていますが、事実を補わなければなりません。結局のところ、あなたは自分にかかるプレッシャーについては知っていますが、家主にかかるプレッシャーについては知りません。より強力なネゴシエーターになるためには、常に自分の方が弱いと思っていることを理解し、それを補う方法を学ぶことです。

このようにお互いの選択肢を挙げていくと、最終的には家主の方が選択肢が多いという結論になるのではないでしょうか。選択肢を補っても、明らかに家主の方が選択肢が多い場合は、家主が力を持っています。時間に追われることなく、余裕を持って契約更新の交渉を行うべきです。しかし、明らかに家主よりも自分の方が選択肢が多い場合は、最後の最後で交渉することで家主に時間的プレッシャーを与えることができます。

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交渉が長引くと人は柔軟になる

相手を長く交渉の場につけておけば、相手も自分の意見に歩み寄ってくれる可能性が高くなります。このままでは相手が動かないと思い始めたとき、マンハッタンに面するハドソン川に浮かぶタグボートを思い出してみてください。小さなタグボートでも、少しずつならあの巨大な外洋船を引いて動かすことができます。しかし、タグボートの船長がバックして、エンジンをかけて強引に外洋船を押そうとしても、全くビクともしません。そんな風に交渉する人もいます。

交渉で行き詰まり、不満が募ると、焦って相手の考えを変えさせようとします。代わりにそのタグボートのことを考えてみてください。少しずつでも、外洋船を動かすことができます。あなたに十分な忍耐力があれば、誰の心でも少しずつ変えることができるのです。

ただし残念ながら、これはどちらにも当てはまります。交渉の時間が長ければ長いほど、譲歩してしまう可能性は双方ともに高くなるのです。あなたは、大きなビジネスの交渉のためにサンフランシスコに飛んだとしましょう。朝8時、あなたは明るく新鮮な気持ちで相手のオフィスに着いて、頑張ろう、目標を達成しようと決意していました。

「手ぶらで帰るわけにはいかない」と思う時点で負ける

しかし、残念ながら、期待通りにはいきませんでした。午前中は何の進展もなく、昼食をとることになりました。午後になっても、わずかな点でしか合意が得られません。あなたは航空会社に電話して、深夜便のフライトに変更してもらいます。夕食を食べに行って、何かをやり遂げようと思って戻ってきます。気をつけましょう。よほど気をつけないと、午後10時頃には、朝始めたときには意図していなかったような譲歩を始めてしまいがちです。