キセキのコトバに振り回されない

本稿を含め、これまで4回にわたって腰痛編をお送りしてきました。最後にぜひ皆さんにお伝えしたいことがあります。

「運動法Aを用いたら、腰回りの筋肉がつき、腰痛の80%は解消します」
「器具Bを用いたら、あっという間にあなたの腰痛はなくなります。満足度90%以上」
「薬剤Cで長年の腰痛から解放されました。効果を80%以上の人が実感」
「サプリメントDで腰痛が劇的に改善した」

慢性の腰痛や腰回りの筋肉の弱体化に悩む人々にとって、ワラにもすがるような「キセキのコトバ」をよく見受けます。

もちろん誇大広告もありますが、①どんな腰痛に対して、②どの程度の改善を目標にして、③どれだけの期間有効か、が明示されていません。「効果・効能には個人差があります」という注釈はエビデンスがないことを物語っています。

多くの人は年齢を重ねるごとに体のどこかに慢性の痛みに悩まされます。腰痛、肩こり、ひざ痛、頭痛……急性一過性のギックリ腰のように突然起こることもあります。症状がひどい人は体の複数部位から同時に、または代わる代わる痛みに襲われます。

医学が発達し、人の寿命は長くなりました。痛みとの向き合い方は生活の質に大きく関わってきます。痛みの予防に大きく影響する「筋力アップ」に取り組むのに遅すぎることはありませんが、早いほどより有効であることも事実です。

写真=iStock.com/Tomwang112
※写真はイメージです

これを機に痛みに対する知識と理解を深めていただき、単なる長寿ではなく、健康で充実した長寿を目指していただきたいと考えています。痛みの臨床現場最前線からの心からの願いです。

(詳しく知りたい方はこちら)
・慢性痛に関する医療者(患者・家族)向けYouTubeチャンネル「慢性の痛み講座 北原先生の痛み塾」
*MRIから腰部脊柱管狭窄症を指摘され、それが腰痛の原因だ、と説明される患者さんがいます。慢性痛における画像診断の位置づけについてお話ししています。
第57回:慢性痛講座 神経痛概論
第58回:神経痛概論② 神経痛の診断基準ほか
第59回:神経痛各論 坐骨神経痛ほか
*腰痛の原因として、坐骨神経痛や腰部脊柱管狭窄症という病名をつけられる人が結構います。そのような、「神経痛」の診断がしっかり行われていないことについて、指摘しています。
・慢性痛についての総合的情報サイト「&慢性痛 知っておきたい慢性痛のホント
*私が一般の方向けに総合監修しています。動画「あるペインの少女クララ」は必見です!

(注1)本稿での解説は、世界最高峰の痛みの研究組織、米国ワシントン州立ワシントン大学集学的痛み治療センターでの5年間の留学時代に習得し、日本帰国後に臨床に応用し多くの症例を積み重ねたうえで多少改変した、痛みの専門医として有効性が高いと感じる個人的見解、私論であります。意見には個人差がありますので、あくまでも主治医の先生と相談のうえ、どの治療を選択するかは自己責任としてくださいますよう、お願い申し上げます。
(注2)私の在籍する横浜市立大学附属市民総合医療センター ペインクリニック内科では、現在、神奈川県内の患者さんのみ受け付けています。全国各地からのお問い合わせは
「慢性の痛み政策ホームページ」の全国の集学的痛みセンターの一覧をご参照ください▼
https://paincenter.jp/about/
(注3)厚生労働省「からだの痛み相談支援事業」の電話相談窓口はこちらです▼
https://itami-net.or.jp/consultation

(聞き手・構成=医療・健康コミュニケーター高橋誠)
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