ストーカー被害、誹謗中傷の始まり

その頃、髙橋さんは、競輪の仕事で関わりのあった男性からのストーカー行為に悩んでいた。

「『死にたい』などと電話がかかってきて、むげにもできず対応していたのですが、徐々に回数が増え、内容もエスカレートしてきたんです。長文のメールを大量に送ってきたり、仕事先に中傷の電話をかけてくるようにもなりました。家族に危害を加えることを示唆した内容のメールもありました」

ついに美清さんは被害届を出し、この男性は2015年にストーカー規制法違反の疑いで逮捕された(脅迫罪で罰金の略式命令)。

競輪業界で有名だったこの男性の逮捕は、マスコミにも取り上げられた。

こうした事件の場合、実際は何百回もの電話やメールがあっても、逮捕容疑となるのはそのごく一部であることが一般的だ。

「実際はメール約300通、電話約400回のストーカー事件だったのですが、逮捕容疑はこのうちのメール3通、電話14本。テレビの情報番組で、そこを勘違いした司会者が、『たったこれだけでストーカー呼ばわりされたら、日本中の男がストーカーになってしまう』と発言したんです」

ストーカーの被害者は、「群馬県在住の50代のアナウンサー」と報じられ、ネットでは髙橋さんの身元も特定された。ここから、髙橋さんに対するすさまじいネット中傷が始まった。

「男性が個人ブログに、私にお金を取られたといったうその書き込みをしていたせいもあって、『ひどい女だ』『なぜこれくらい(メール3通と電話14回)で逮捕されなくてはならないんだ。(男性が)かわいそうだ』と、私に非難の矛先が向いたんです」

逮捕後まもなく、男性が不慮の事故で亡くなったことで、騒ぎはさらに大きくなっていった。やがて、複数の匿名アカウントから、「人殺し」「お前が死ね」などのメールが直接、髙橋さんの元に届くようになった。さまざまなネットの掲示板や匿名の個人ブログ、SNSなどにも、髙橋さんを中傷する内容が大量に書き込まれた。信頼していた仕事関係者や知人も、SNSの中傷に加担するような内容を書き込んでいた。

一時は「本当に死んだ方がいいのでは」と思い詰めた髙橋さんだったが、2017年には「髙橋しげみ」の名を葬り、僧侶「髙橋美清」として生き直すことに決めた。

(後編に続く)

(文=山脇 麻生)
関連記事
ブッダの言葉に学ぶ「横柄でえらそうな人」を一瞬で黙らせる"ある質問"【2021上半期BEST5】
「どんな人なのかが一発でわかる」銀座のママが初対面で必ず確認する"身体の部位"
子どもに月経や射精について話すときに「絶対使ってはいけない言葉」2つ
飲食店はクビ、結婚は破談…34歳男性が背負った「和歌山カレー事件の加害者家族」という十字架
眞子さんはNY生活を謳歌中だが…記者会見で「不快感」を隠さなかった秋篠宮さまの胸の内