復帰後に感じた日本テニスへの不安

しかし、約12年後の2008年、私は長いブランクを経て現役に再チャレンジしました。当面の目標は国内大会である全日本選手権に出場することでしたが、試合の勘を取り戻すため、国内における国際大会、ITF(国際テニス連盟)トーナメントに出場。私にとっての復帰戦となったその試合は岐阜で行われましたが、驚いたことにそのコートはなんと砂入り人工芝! ファーストキャリアを引退後、解説者として見てきた世界のテニスと日本のテニスの差がまた大きく広がっていることを感じずにはいられませんでした。

当時、私は、テクニックはあるのにランキングに現れていない日本の女子テニス界の現状がとても残念で不安にも感じていました。プロテニスプレーヤーとして生きていくには、「世界で戦う」という人生設計を描くことがとても大切だと思います。

具体的には、WTA(女子テニス協会)ツアーで戦える位置を視野に入れ、1年間のカレンダーを組み、グランドスラムの本戦に出場するレベル、ランキング110位以内を指標とすること。そうした世界レベルでの活躍を目指すために必要なことを、世界を見てきた私が今のプレーヤーたちと同じコートに立って戦うことで伝えられるのではないか――。そんな思いとテニスへの情熱が膨れあがるばかりでした。

パワー化・スピード化が進む現代のテニス

こうして始まった私の再チャレンジでしたが、テニスの世界は1990年代とは大きく様変わりしていました。2009年からパワー化・スピード化だけではなく、チャレンジシステムの導入、最初の1ゲーム後にはベンチに座らずエンドチェンジのみをすること、(WTAの大会では)女子の場合はゲームのチェンジオーバー中にオンコートコーチングが使える、といった新たなルールができていったのです。

私自身、その情報をテレビなどを通じて知っていましたが、長年染みついた旧来のルールから新しいルールに順応するのは、意外と難しかったのです。さらに、そこで目の当たりにしたのは新しいタイプのハードコート「スローハード」です。使ってみると、ボールは高く弾み、球速は遅くなり、相手からのボールも全く予想外の動きを見せました。

でも、プレーヤーたちはこうした新しいコートにもしっかりと適応し、パワーテニス、スピードテニスに変化を遂げてきています。フィジカルを鍛え、進化したラケットをうまく使いながら、どんなサーフェスにも対応できるプレースタイルを持つことが必要なのだと強く感じました。