ロシア社会の闇を映し出した事件
別の村を見てみると、死者が出たオールスク村に開設されている配送センターにはウオッカ入りの1200本のボトルが保管されていた。
地元の4人の失業者がそのウオッカを買い取り、周辺の村に点在する店に売り歩いていたそうだが、そのセンターの経営者は村の副検事だった。
今回オレンブルグ州の6つの村で起きた事件は、貧困ビジネスの結果起きたものといえる。政治家や公務員が社会の裏で違法ビジネスに手を染め、失業者や出稼ぎ労働者を使って、貧困層からお金を巻き上げる構図だ。
低所得者はとにかく安価な物品を買い求める。ロシアの貧困者の絶対数は年々増加しているので、貧困ビジネスは拡大を続ける。
相次ぐ密造酒による死亡事故の背景にはこうした現在ロシア社会が抱える闇があるのだ。
正規のウオッカの代わりにロシア人が飲んでいるもの
ロシアの主要紙「イズベスチヤ」は、「ロシア連邦アルコール飲料衛生管理庁の報告(2020年第1四半期実施)によれば、酒類販売業免許を得ていない商店で売られたり、エチルアルコール量を含む成分に不正があるなど法律上の瑕疵が認められたアルコール飲料の売り上げの割合は全体の30~35%に上る」さらに、「管理庁の調査期間中に1万4000件の違法が摘発され、その約56%を占めているのが密造ウオッカだ」と報じている。
驚くべきことに、ロシアでは平然と違法酒がスーパーに並べられているのだ。では、安全な酒はどう選べばいいのか。
ロシア国内で販売されているウオッカの一つに、プーチン大統領に由来する「プーチンカ」という銘柄がある。私のロシア人の友人はこう豪語する。
「プーチンカならば、中毒にかかることはない。国家の体面に関わるからね」