逮捕者の中に村役場の人間が含まれている

現在14人が逮捕され、15人が取り調べ中だ。逮捕者の中には村役場に勤務する9人の職員が含まれており、役場ぐるみの組織犯罪の線が強い。

事件が起きた村の一つであるアダーモフカ村にある「ウダーチャ(ロシア語で幸運の意味)」という名前の商店で密造ウオッカを購入した男性はこう皮肉る。

「“幸運”の店でウオッカを買ったら、とんでもないことになりました。店は1軒ですので、私たちの宿命みたいなものでしょうか。経営者は、隣村のムラート・スエンバーエフ村長です。彼はオレンブルグ州では著名な実業家です。店内で密造ウオッカが販売されていることは当然知っていたはずです」(「ロシア第1チャンネル」10月19日放送)

出稼ぎ労働者が密造ウオッカを運び込む

興味深いのは、ウオッカをアダーモフカ村の配送センターに運び込んだのは、アゼルバイジャンからの3人の出稼ぎ労働者だったという点だ。

2020年のロシア内務省の統計によれば、出稼ぎ労働者は全土で1600万人を数え、人口の11%を占める。アゼルバイジャン出身者も多く、モスクワ市内の工事現場でよく見かける。

ただ欧米諸国の経済制裁に加え、コロナ感染者の増大が重なり、ロシアの景気後退は深刻である。出稼ぎ労働者の多くは祖国に帰還する者もいたが、モスクワからロシア各地に出た者も多くいる。今回の事件は、そうした不況で職にあぶれた出稼ぎ労働者が関与している。