薬で痛みをごまかしてはいけない

腰椎ようついがやられると、腰だけではなく下半身全体、広範囲に神経症状が出ます。足の力が弱くなったり、足がしびれたり、膝が崩れたり、ひんぱんに足のつま先がテーブルの脚にぶつかったり、つまずいたり、尿漏れなどの膀胱・直腸障害といった神経所見があることも、腰痛に何か危険な原因があるというサインになります。

特に40歳以上になって、急に背中やお腹が痛くなった、ダイエットをしているわけでもないのに急に体重が減った、疲れやすくなった、微熱が続くなど、今までになかったことが起こる、これは臓器の異常のサインです。

厄介なことに、すい臓がんや腎臓がんは痛みそのものが出にくいケースもありますので、なおさら体重の減少を見逃してはいけません。腰痛が始まったのと前後して急に体重が減った時は、問答無用、待ったなしで医者に行って画像診断を含む精密検査を受けましょう。

いつもの筋肉痛だから「そのうち治るだろう」と放置したり、「数時間は効くから少しはラク」と言って、ドラッグストアで買った痛み止めの薬でごまかしたりなど、素人判断は禁物です。

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痛み止めは、原因のある臓器の異常に効く場合があります。だからといって痛み止めの長期に及ぶ多用は、危険な症状の早期発見を阻害します。

手遅れを招かないためにも“その場しのぎ”を続けてはいけません。ましてやマッサージや自己流ストレッチなどで痛みを和らげるレベルを超えていると見るべきでしょう。

北原式 すぐに医者に行くべき急性の腰痛を見極める6つのポイント
1.眠れないほど腰や背中が痛む。
2.やたらつまずく(下半身の神経所見がある)。
3.急に体重が減った。
4.とても疲れやすくなった。
5.今までになかった痛みである。
6.痛み止めが有効で、多用するとしばらくは耐えられる。

すい臓がんで命を落としたある50代女性のケース

ある50代女性の症例を紹介します。初診の時、女性は「明け方にみぞおちの奥から背中に突き抜けるような痛みにうなされて目が覚める」「体重が少し減少している」とおっしゃいました。

明らかにすい臓がんの痛みの特徴で、「これはまずい」と思い、すぐに大きな病院でのMRI撮影をお勧めしました。すると末期のすい臓がんが判明し、もはや手遅れで、3カ月後に亡くなりました。

女性は「痛みで目が覚める」「体重減少」という危険な、特徴的な2つのサインを2年間放置していたそうです。近隣クリニックでの毎年の血液検査とレントゲンで異常がなかったためでした。しかし、すい臓がんは血液検査とレントゲンではわからない腫瘍なのです。本当に残念な自己判断でした。