人と話すのは、勝ち負けを決めるためではない

話をするとき、相手を決して言い負かさないことが大切です。言い負かすと、相手は大変に嫌な気持ちになりますし、こちらも心が乱れて、しばらくは平常心を失ってしまいます。

比較的自然体が身についている私でも、後々まで影響します。話をする目的は、こちらの主張に同意してもらうことであり、言い負かすためではありません。論破などもってのほかです。

相手が合意し、結果としてこちらの望む方向に動いてもらえれば、それで十分です。ときどき、相手を言い負かすことに喜びを見いだしている人がいますが、意味がありません。

人と話すのは、勝ち負けを決めるためではありません。楽しみだけの会話ではなく、ある目的をもった会話の場合、こちらの気持ちと事情を伝え、合意してもらい、何かの行動を起こしてもらうために話しています。

写真=iStock.com/filadendron
※写真はイメージです

IoTとAIの時代になれば、言葉の暴力、言葉による威圧を自動的に見つけ出して警告するなどは、容易です。そういうログを取る会社が急速に増えていきます。

そこまでいかなくても、何もいいことがないので、言い負かすのはやめたほうがいいです。思うように物事が進まないだけではなく、しこりとなって邪魔をされるなど、あとになってトラブルが起こりやすいのです。

お互いに言い合ってようやく勝負がついたとき、どうしても最後のひと言を言いたくなりますが、これもやめておきましょう。どう考えても不必要ですし、将来の紛争のネタになりかねません。私も余計なひと言を言わなかったか、いつも注意しています。

論破ではなく、共感

相手の発言をわけがわからないと感じると、どうしても論破してしまいたくなります。

そのときは、相手がなぜそういうことを言うのか、わけがわからないことを言うのか、その心情を理解し、共感しようとしてみてください。論破したい気持ちがかなりおさまるはずです。

特に話の通じない人でないかぎり、わけがわからないことを言うのには理由があります。

① 話の前提が違う

それぞれの役割に対して誤解があったり説明不足があったりするときは、話の前提が違うので、わけがわからないことを言うように見えます。結論は違ってきます。

当然、こちらが悪いこともよくあります。お互い熱くなっていると、おかしいなと思いながらも、話の前提を途中で確認できず、衝突が激しくなることがあります。

② 根本的な価値観が噛み合わない

主義主張があまりにも違う組織間では、よほど相手の立場に立たないと、わけがわからなくなります。大前提が違うので、「活動のねらい」「活動内容」「協力」「広報」などの言葉の意味する内容に大きくギャップが生まれやすいのです。

例えば、「協力」という言葉であれば、一方は「一緒にやること、対等な関係でお互いフェアに貢献しあうこと」であり、もう一方は「依頼した側がほとんどやり、依頼された側は頼まれた範囲で最低限お付き合いすること」と考えていたりするのです。