落としどころの目星をつける

相手に響く「大義」を明確にした上で、落としどころの目星をつけておくことが大切です。

落としどころとは、「やりとりした結果、互いに合意できるライン」ですね。相手の立場や事情を考えると、こちらの主張がすんなり通ることはまれで、どこかで線引きをして合意する必要があるからです。

そのためには、現実的な見方がどうしても必要です。現実的な見方とは、「あるべき姿を踏まえながらも、実際にやろうとしたとき、過度に無理をせずに実行できる方法」を選ぶ、ということです。

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1回のミーティングで合意できるのか、2〜3回に分けて議論すれば合意できそうなのか、あるいは、ギャップがありすぎて今はあきらめたほうがいいのかも含めて、冷静に判断します。

感情のおもむくまま「当たってくだけろ」的に動く人がいますが、その姿勢だと継続的にうまくいくことはありません。成功する場合もあるのですが、再現性は低いと考えたほうがよさそうです。

落としどころの目星をつけることはそこまでむずかしくありません。

「落としどころを考えたほうがよい。そのほうがよい結果になる」という考え方をすることが大切です。落としどころに若干の幅があっても、大きな問題にはならず前進するケースが多いです。

人間関係をつくるためにものすごく大切な2つのこと

いざというときに役立つよい関係をどのようにしてつくっておけばいいのでしょうか。

これこそまさに「仕込み」であり、意識して取り組むべきことです。必ずしも私が得意ではない分野ですが、それでもある程度できるよう努力しています。

必ずしも得意ではない、というのは2つ理由があります。

1つには、お酒があまり強くないので、夜ゆっくり飲み交わすとか二次会、三次会に喜んで行く、ということがほとんどないからです。昼間のミーティングよりは濃い会話ができたり、意気投合しやすかったりしますので、残念だとは思っています。

マッキンゼー時代に韓国で10年間仕事をしていたときは、日本以上に夜の付き合いが重要なので、飲めるふりをしていました。

韓国では献杯、返杯が重要なので、席についたらすぐにその場で一番えらい人に献杯して相手の機先を制し、返杯を受けたら少しだけ口をつけて、あとは横の茶碗などに空けてまた献杯する、という裏技があったからです。

2つ目の理由は、どちらかというと内向的なほうなので、多くの人とずっと一緒にいたいとか、自分のことをどんどんしゃべりたいという気持ちがないことです。

仕事柄、人にはたくさん会いますし、年間100回ほどのセミナーも開催しているのでそれ自体は決して苦痛ではないのですが、夜とか週末とか、1人でいるほうがどちらかというと楽しいのです。

さて、人間関係をつくるために一番大切なことが何か考えてみると、2つあります。それは「好印象を与えること」と「嫌われないこと」です。

好印象を残せるかどうかはやや運の部分もありますが、嫌われないためには、やるべきことがあります。外見や第一印象で決めつけず、相手の話を丁寧かつ真剣に聞くことです。

話を聞いてくれる人を嫌うことはまずありませんので、驚くほど効果的です。苦手意識がある私がどうやって、いざというときに役立つよい関係をつくったか、つくろうとしたかをお話しします。少しでも参考になればと思います。