早稲田政経は社会の独自問題をやめ、数学を必須にした

変化は私立大学入試でも見られた。なかでも注目すべきは早稲田大学政治経済学部の入試改革だ。早稲田の政経といえば、同大学でも最も難度が高いことで知られている。なかでも歴史の試験は、膨大な知識が要求された。大学受験の歴史のバイブルといえば「山川の一問一答」と答える人は多いと思うが、それを隅から隅まで読んでも見逃してしまうような細かい知識を問う、受験生泣かせの試験内容だった。ところが、その社会の入試を独自問題から共通テストにあっさり切り替えたのだ。

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変更点はほかにもある。これまでは大学独自の問題のみ、外国語(90点)・国語(70点)・地理歴史または数学(70点)の計230点満点という構成で、外国語と国語は必須、地理、歴史、または数学は選択の合計3科目入試だった。それが2021年度入試から、共通テスト100点満点・大学独自試験100点満点の計200点満点に変わったのだ。共通テストは外国語・国語・数学(数学Ⅰ・数学A)・選択科目(地理歴史・公民、数学Ⅱ・B、理科のいずれか一つを選択)の4科目と、これまでより1科目増えることになった。また、大学独自の入試は「総合問題」と呼ばれ、国語と英語による長文を読み解いて解答する問題になった(記述解答もあり)。

スマホで手に入る知識より、情報を活用する力が重要

なぜこのような大きな変化があったのか?

社会については、これまでは受験生をふるい落とすために、大学受験に特化した高度な知識問題を出題してきたが、今やこうした知識はスマホ一つで簡単に調べられるようになった。大量の知識を頭に叩き込むよりも、世の中のさまざまなことに関心を持ち、数ある情報の中から事実を読み取り、自分なりに判断し、活用していく力をつける方がはるかに重要だ。学んだことが実社会に生きてくるような入試に変えていく必要性を感じたのだろう。今回、共通テストがそのような内容にシフトチェンジしたことで、それを利用しない手はないと考えた。

選択科目だった数学が必須科目になったのは、もともと経済学では高度な数学を多用しているし、政治学でも統計や数理分析などの数学の知識が求められる。立場が異なる人たちとの議論が前提となるグローバル社会では、数字という客観的なものを用いて論理的に説明することが必須だ。グローバル化が進む時代、理系科目が苦手だから文系を選ぶという日本独自の思考回路はもはや成立しなくなっているのだ。