内政に行き詰まり、北朝鮮は焦っている
岸田政権は外交ルートを通じ、「弾道ミサイルの発射は国連安全保障理事会の決議に違反する」と北朝鮮側に抗議した。
日本の抗議は当然である。ただ、ここで見方を変えると、日本に北朝鮮との直接交渉の可能性が残されていると判断できる。なぜなら、北朝鮮があえて公示日を狙ったということは日本の存在をかなり意識していると考えられるからだ。
アメリカのトランプ前大統領は米朝首脳会談を実現し、「今度は晋三の番だ」と安倍晋三首相(当時)の背中を押した。安倍首相は「次は私が金正恩氏と交渉する」と前提条件を設けない日朝首脳会談の開催を明言した。だが、金正恩総書記に相手にされなかった。菅義偉前首相も同様に突き放され、日本と北朝鮮のパイプはふさがったままだった。
ここに来て北朝鮮側は焦っている。9月以降、新型の長距離巡航ミサイル、列車から発射できる弾道ミサイル、それに極超音速ミサイルといくつもの攻撃手段を開発した軍事能力を誇示している。金正恩総書記も「無敵の軍事力を保有することは最重要政策」との主張を繰り返す。
北朝鮮の弾道ミサイル発射は安保理決議に違反する
しかし、北朝鮮は国連安保理による経済制裁や災害と食料不足、国民の貧困化で内政にかなり行き詰まっている。金正恩総書記はこれらの問題を解決するためにもう一度アメリカとの交渉を実現し、交渉を有利に運んで制裁を跳ねのけたいのだ。そのためにアメリカと同盟関係にある日本を利用したいと考えているのだろう。
そこで岸田政権は北朝鮮との直接交渉を実現し、日本にとって最大の懸案となっている拉致問題の解決にこぎつけるべきだ。もちろん核・ミサイルの開発を中止させ、それらの放棄を求めることも強く求める必要がある。
10月23日付の産経新聞の社説(主張)は「北のミサイル発射 安保理の沈黙は大失態だ」との見出しを立て、「日本を含む地域の平和と安全を脅かすもので到底受け入れられない。弾道技術を使ったミサイル発射は国連安全保障理事会の決議違反であり、即刻やめさせなければならない」と訴える。
だれがどこからどう考えても北朝鮮の弾道ミサイル発射は安保理決議に違反することは明らかである。