なぜ安保理は機能しないのか
産経社説は安保理の不甲斐なさを次々と指摘し、強く批判する。
「心もとないのは、その先頭に立つべき安保理が『平和の番人』として機能していないことだ。20日に緊急会合を開いたが、一致した声明を発表できなかった」
「安保理は北朝鮮に核・弾道ミサイルの廃棄を求め、そのため、禁輸などの制裁を科している。それでも暴挙をやめないなら、さらなる措置を講じるべきだ」
「明らかな決議違反を前に会合を開き、報道声明もなしでは、意見の不一致を世界に示すようなものであり、大きな失態だ」
なぜ安保理は機能しないのか。
産経社説はその答えを「北朝鮮問題での安保理の無力は常任理事国の中国とロシアが、擁護しているのが要因だが、それは今に始まったことではない」と書く。
日本は北朝鮮の核・ミサイル攻撃の標的下にあり、理不尽な拉致事件で大きな被害を受けている。常任理事国ではないが、ここは日本が率先して安保理に強く訴えるべきである。
産経社説は「米中対立が激化する中、北朝鮮の軍事挑発が中国の手ごまになっているのだとすれば、これは大きな問題である」と強調するが、やはり中国はアメリカに対抗するために北朝鮮をうまく使っていると考えるべきだ。
さらに産経社説は「バイデン米政権に米朝交渉に向けた目立った動きが見られないのは懸念材料だ。時間がたつほどに、北朝鮮は核戦力を増強させ、対米交渉で優位に立つ思惑もある」とも指摘する。
バイデン大統領は北朝鮮を脅威だとは思っていないのか。そんなはずはない。いずれ北朝鮮の弾道ミサイルはアメリカ本土をも確実に攻撃できる能力を持つ。世界の情報戦に通じたアメリカだ。何か情報をつかんでひそかに水面下で動いているのかもしれない。
安保理の常任理事国には、平和を守る義務と責任がある
10月26日の読売新聞の社説は「北朝鮮が国際社会の批判に逆らって、核の運搬手段となるミサイルの多様化を推進する姿勢が改めて明確になった」と書き出し、こう主張する。
「政府は、深刻化する脅威を直視し、対応を強めなければならない」。見出しも「政府は危機管理を再点検せよ」である。
脅威を直視することが重要だ。北朝鮮のミサイル発射に慣れ、脅威を感じないようでは困る。危機管理を再点検することは脅威を新たに感じ取り、万一の有事に備えることに直結する。
読売社説は指摘する。
「ミサイルの小型化や性能の向上が進んだ可能性がある」
「実戦配備されれば、北朝鮮の陸上の戦力が壊滅しても、潜水艦からの報復能力が残ることになる。米国などからの攻撃を牽制する思惑があるのだろう」
北朝鮮の核・ミサイル技術は確実に向上している。国連安保理の常任理事国(アメリカ、イギリス、フランス、中国、ロシア)には、世界の平和を守る義務と責任がある。とくに中国とロシアにはその義務と責任の重さを自覚してもらいたい。
読売社説は後半で「発射の際、岸田首相と松野官房長官は共に、衆院選の運動で東京を離れていた。危機管理を率いるトップが2人とも首相官邸に不在という緊張感の薄さは問題だ」と岸田政権を批判する。
保守を代表する新聞の社説だからと言って自民党の政権に遠慮することはない。これからも適切な批判を行い、新聞社説の意義と存在感を高めてほしい。