対人恐怖症になる人は、他人に好かれたい欲望が強いからこそ「嫌われてはいけない」と不安に陥ります。つまり不安の裏側に必ず欲望があって、この時に「不安がる」のとは別のルートから、本来持っている欲望を満たす方法を探すのが森田療法なのです。

赤面恐怖という病気の患者は「顔が赤くなるから人前に出られない」「赤い顔では皆に嫌われてしまう」などと思い込んでいるわけです。

そうしてその患者が「先生、顔が赤くなるのをなんとかしてください」と言った時に、森田療法では「あなたはなぜ顔が赤くなるのが嫌なの?」と問いかけることから始めます。

「嫌われたくない」という根源的な欲望を見つめること

「こんな赤い顔になっていてはみんなに嫌われますよ」
「嫌われたくないということは、あなたは人から好かれたいのですね?」
「いや好かれたいけれど、こんなに顔が赤いのでは嫌われてしまいます」

和田秀樹『適応障害の真実』(宝島社新書)

「私は30年も精神科医をやっているけれど、顔が赤くなっても好かれている人は何人も知っていますよ」
「そんなの例外です」
「そうでもありませんよ。それに、もっとたくさん知っているのは顔が赤くなくても嫌われている人です」

そこでさらに踏み込んで「あなたが顔が赤くなるのを治せば好かれると思っているけれど、それは甘い考えだ」と指摘します。そして「顔の色に関係なく、好かれる努力をしない限りは好かれないのです」と考え方や行動の変化を促していくのです。

「あなたの顔が赤くなるのは治せないけれども、あなたが人から好かれるために、もうちょっと話術を磨くとか、普段からニコニコするとか、極力元気にあいさつをするというような、あなたが他人から好かれる方法であれば一緒に考えることはできますよ」というのが森田療法的カウンセリングの一例です。

関連記事
「精神科医が見ればすぐにわかる」"毒親"ぶりが表れる診察室での"ある様子"
精神科医・和田秀樹「複雑性PTSDなんかではない」眞子さまの本当の病名は
子どもに月経や射精について話すときに「絶対使ってはいけない言葉」2つ
「世帯年収は300万円台」大借金家庭から東大に進んだ僕が、"親ガチャ"に違和感をもつ理由
「すべての親は真似するべき」ヒカキンの親が絶対にやらなかった"あること"