親が東京大学出身だと、子どもも東大に合格しやすいと言われている。精神科医の和田秀樹さんは「合格しやすい要因は遺伝ではない。勉強で『程よく手を抜く』というテクニックを親から教えてもらえるからだ」という――。

※本稿は、和田秀樹『適応障害の真実』(宝島社新書)の一部を再編集したものです。

デジタルタブレットを持って教室で手を上げる子ども
写真=iStock.com/recep-bg
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テレビの「決めつけ」は偏った思考のクセがつく

偏った思考のクセがついてしまうのは、日本の場合、やはりテレビマスコミの悪影響が大きいように思います。

テレビは何事に対しても深い考察もないまま「決めつけ」をしてしまうところがあります。新型コロナに関しても実際にはわからないことばかりなのに、感染症の素人にすぎないワイドショーのコメンテーターが、あたかも「このやり方だけが正解」と話している姿をよく目にします。

テレビにおいては、どんな問題に対しても「どちらが正しいか」と白黒をつけるような議論になりがちです。そうして相手の言うことを認めてしまえば「負けた」とされてしまいます。

そのように勝った負けたで物事を決めつけるのは、適応障害になりやすい人にありがちな思考パターンの一つです。

テレビの中の人たちはあえて「商売」でそのような物言いをしているのですから、彼らは何を言ったところで自分のメンタルを傷めることもないでしょう。しかし、これを聞かされる一般の視聴者たちはそうではありません。テレビでの発言を真に受けて、その思考パターンに染まってしまえば、これが適応障害への入り口になりかねません。

スキャンダルを起こした途端に悪人に仕立て上げる

相手が敵か味方かをすぐに決めなければいけないというのは、テレビの討論番組でありがちな演出ですが、現実においては意見の9割がた自分と合う相手でも、1割ぐらいは違っていることはよくあります。ですから物事の白黒を明確につけることは、一見すると正しいようでも現実にはそぐわないものなのです。そのような相手に対しては「白が9割で黒が1割ぐらいの薄いグレー」とのような見方をしたほうがいいわけです。

それをテレビは「悪人か善人か」などとスパッと決めてしまいます。芸能人や著名人もスキャンダルを起こした途端にそれまでの実績やよかった部分が全部なかったことになり、悪人とされてしまいます。

これは明らかな適応障害的思考パターンです。

仮に私がテレビに出演して「この犯罪者はどんなパーソナリティの人なのでしょう」と尋ねられた時には、そこは一応プロですからいくつかの可能性を挙げることはできます。しかし同時に、精神科医としての信念やプライドもありますから、診療をしてもいない人に対して簡単に「この人はこういうタイプです」と断言することはできません。そのため「こんな可能性もあるし、こういうことも考えられる」というような発言をすることになるでしょう。