しかしテレビでは、長々と解説する時間は与えられません。テレビは何事に対しても10秒、15秒でスパっと決めつけることのできる人たちが生き残るメディアであり、正誤を気にせず断定的なことを言える人だけが生き残るメディアなのです。

東大卒の親の子どもが東大に合格する理由

受験に関して「なぜ東京大学出身の親の子どもが東大に入るのか」と尋ねられた時に、私は「それは遺伝ではなくて、やり方を伝授されるからだ」と答えています。つまり、東大に入るためのテクニックを親から教えてもらえる子どもは東大合格の可能性が高くなるということです。

東大出身の親が合格のための方法を伝授する時の重要なテクニックは、「こんなものはできなくても受かるから」「一つの科目が苦手でもほかで点を取っておけばいいんだよ」などと言って子どもの精神的負担を軽減することです。これを無意識のうちにできる親の子どもは、受験に限らずその他のストレス要因に対しても強くなります。

これとは逆に「こんなこともできないのか!」と叱責するような親だと、その子どもは受験でストレスを受けることになってしまいます。

受験指導をしてきた経験から見ても、東大に根性で入った親の子どもは意外と東大に合格していません。

マーク式テスト
写真=iStock.com/smolaw11
※写真はイメージです

「失敗してもいい」という職場は雰囲気がよくなる

これは受験だけの話ではなく職場においても同様で、精神的負担を軽減するアドバイスを示唆してくれる上司がいるかどうかは重要です。部下に対して「満点の仕事ができなくてもここまでできていればいいんだから」「早く提出してくれれば間違いがあってもこっちで直しておくから」などと言える上司がいる職場は、自ずと全体の雰囲気がよくなるものです。

受験も仕事も満点主義ではなく、合格点主義で物事を考えれば精神の負担やストレスが少なくなります。

新興企業に見られる「失敗してもいい」「やってみなければわからない」というような企業風土もメンタルヘルスのうえではとてもよいことです。

旧態依然とした会社にありがちな満点主義、完全主義の職場は社員のメンタルヘルスの面からすると厳しいものがあると言わざるを得ません。