世界20カ国超で販売するブランドが日本にも
ここまでは「レモン系」だが、第3弾ではフレーバーの味を広げた。9月20日から関西の2府2県(大阪府・京都府・兵庫県・奈良県)で限定販売している「トポチコ ハードセルツァー」だ。味は「アサイーグレープ」「タンジーレモンライム」「パイナップルツイスト」の3タイプ。いずれもアルコール分5%、果汁0%という炭酸水のアルコール飲料だ。
舌をかみそうなブランド名だが、アルコールが入っていることを意味する「ハード」に、炭酸水を指す「セルツァー」を組み合わせた造語だ。こちらの訴求相手はそれなりに飲める層。世界20カ国以上で販売する同ブランドは、日本での発売は22カ国目になるという。
第1弾「檸檬堂」が日本製なのに対し、第2弾と第3弾は舶来品だ。パッケージはかなり異なるが、①レモンサワー、②ハードレモネード、③ハード炭酸水という、清涼飲料メーカーらしいブランド展開となっている。
「最初のアルコール販売」になぜ日本が選ばれたのか
ところでCNN報道では2019年、日本コカ・コーラのホルヘ・ガルドゥニョ社長が「コカ・コーラではアルコール飲料の世界展開を予定していない」と述べ、「この国の文化は非常に独特なので、ここで生まれた製品の多くはここにとどまる」と説明した。
あれから2年。前述のようにアルコール飲料は世界各国で展開されるようになった。当時と今とでは日本法人の社内ムードも変わったのだろうか。
「まず報道当時は、本当に世界展開の予定はありませんでした。それが『檸檬堂』で消費者が当社のアルコール飲料を支持していただくのを実感した。世界でもやっていく気運が高まり、『トポチコ』ブランドのグローバル展開につながっていきました」(関口さん)
さらに「日本は新製品が非常に多く日々変化するようなイノベーション市場。アトランタ(米国のザ コカ・コーラ カンパニー)も日本市場の特性は理解しています」と説明する。
成熟市場は「イノベーションマーケット」でもある
この話で思い起こしたのが、かつて米国P&GのCEOを長く務めたアラン・G・ラフリー氏の言葉だ。「日本市場はラーニングマーケットであり、イノベーションマーケットだ」と話した。ラーニング(学び)とイノベーション(技術革新)。当時この言葉を知った筆者は、商品に厳しい(細かい)選択眼を持つ消費者との向き合い方、と理解した。
酒類業界をラーニングした日本コカ・コーラから、「檸檬堂」に続く新たなイノベーションが生まれるか。清涼飲料の市場規模は約5兆円、酒類市場は同3兆5000億円といわれる。
いずれも成熟市場だが、商品開発の現場では「成熟市場でも、まだまだできることがある」も共通認識だ。競合を含めた今後の活動を注視したい。