そこで担当者から「アマゾンのタオルカテゴリーを一緒に強化するパートナーにならないか」と提案を受けた。パートナーになれば、さまざまなデータをみられるようにもなる。ただし、それ相応の協力金はかかるという。

写真提供=伊澤タオル
アマゾンで販売するボリュームフェイスタオル

この提案に対し、伊澤社長は「やります」と即答。この決断力とスピードに、アマゾンの担当者も驚いたという。ここからアマゾンとがっぷり四つでビジネスを始めた。20年3月のことである。

アマゾンで商品が売れると、自然とSNSなどに情報が波及していく。その結果、「伊澤タオルの商品はいいよ」と口コミが広まり、相乗効果が生まれていった。

さらに認知を高めるために、プッシュ型のマーケティングにも乗り出す。アマゾンでタオルをよく検索するユーザーに対して、21年7月、一斉に試供品を送った(配布枚数は非公表)。効果はてきめんで、伊澤タオルの商品を購入する新規ユーザーが増えた。例えば、その直後に行われた「Amazonタイムセール祭り」では、タオルという商品カテゴリーの売り上げ規模をはるかに超え、期間中の平均販売数量は通常時の約16倍を記録した。

「アマゾンのレビューで攻撃されたのは、怖かったし、とても傷つけられました。けれども、けがの功名で、そのときの苦悩が今の成果につながっていると実感しています」

上場は通過点、世界を獲る

伊澤社長が思い描いた、タオルのマス市場をつくり上げるという構想は、コンビニなどの小売・流通各社、そしてアマゾンでの取り組みで現実味を帯びてきた。

筆者撮影
日本企業を世界にアピールしたいと意気込む伊澤社長

これに対して、競合他社はなかなか追いつくのが難しい状況だといえよう。知見や経験に裏打ちされた伊澤タオルの独自のモデルは、そう簡単に真似できるものではないからだ。

伊澤タオルは数年後の上場を目指している。そのために、今年8月にはベンチャーキャピタルのジャフコグループと資本提携した。現状の売上高は約100億円。伊澤社長は、150億~200億円のラインを上場のタイミングだと考えている。この数字は既定路線のビジネスで問題ない。むしろ重要なのはその先で、中長期的には売上高2000億円を掲げる。なぜこの金額かというと、世界のタオルマーケット全体の2割に当たるからだ。これだけのシェアを占めれば、世界一のタオル企業といっても過言ではない。