コンビニ、スーパーで次々売れるタオルの正体
東京・代官山の住宅街にあるコンパクトなビル。その3階に全面ガラス張りの部屋がある。白衣の男性が繊維質の拡大画像を凝視している。
「ここは社内のラボです。日本のタオル企業には置いてないようなデジタル顕微鏡やマイクロスコープを使って、タオルの繊維や素材を分析、研究しているのです」
この会社は伊澤タオルという。社長の伊澤正司氏が自らラボを案内してくれた。
伊澤タオルは、OEM(相手先ブランドによる生産)やODM(相手先ブランドによる設計・製造)を中心とするタオルメーカー。会社名があまり表に出ることはないため、ご存じない人も多いだろうが、取引先は国内外で約150社に上る。また、古くから研究開発に熱心で、この東京本社のラボだけでなく、信州大学の繊維学部の施設内に「伊澤タオル技術研究所」を構えている。さらに、最近では東レとの共同開発など、民間企業との連携も進んでいる。
同社が研究開発に力を入れる理由は、多岐にわたる顧客ニーズに応えたいという思いに尽きる。そのため、約5000種類もの素材を比較検討し、それぞれの顧客に合ったサイズやデザインのタオルをゼロから作り上げている。その過程では、タオルを100回以上洗うなどして、耐久性や吸水性などのテストを徹底的に行っている。
「タオルで世界一になりたい」と、伊澤社長の鼻息は荒い。
これは決して夢物語ではない。すでに実績も出ている。セブン‐イレブン、ローソン、ファミリーマートの大手コンビニエンスストアに加えて、西友、しまむら、コストコなどの小売店にも製品を提供し、次々とヒットを生み出している。
さらに、2019年からはアマゾンでも専用商品を販売。今では売り上げランキング上位を常にキープするほどの人気商品に育っている。
伊澤タオルは数年後の株式上場を目指している。その先には世界市場でのトップシェア獲得も見据える。
飛ぶ鳥を落とす勢いの伊澤タオル。その成長の裏側に迫る。