2代目社長が目を付けた“タオルの盲点”
伊澤タオルは1970年、大阪市住吉区で創業した。「今治タオル」や「泉州タオル」に代表されるように、日本のタオルメーカーの多くは、高級品や贈答品のタオルを主に製造しているが、伊澤タオルは創業以来、実用品のタオルにこだわっている。
1985年に海外生産を始め、専門会社も設立。基本的には中国やインドなどの海外の提携先工場でタオルを作っている。伊澤社長は2代目で、1997年に就任した。伊澤社長の代になってから、海外マーケットと研究開発に大きく舵を切った。それが現在の礎にもなっている。
日本のタオル市場の状況はどうだろうか。矢野経済研究所の調査によると、市場規模は1500億~1600億円。生活必需品であるため、規模が毎年大きく変動することはないが、逆にその安定感が不況にも強い。それはこのコロナ禍にも表れた。
「コロナ禍で落ち込むどころか、むしろ業績が伸びました」と伊澤社長は語る。伊澤タオルの2021年2月期の売上高は約100億円(前年同期は約82億円)。この5年間、前年比約120%のペースで成長を続けている。
一方、不況に強い商品特性であるものの、タオル業界全体の課題として挙げられるのが、業界標準となるようなマス向け商品がないことだ。
「洗剤でも肌着でも、どの家庭にもおいてあるような商品があります。実はタオルにはそれがないのです」と伊澤社長は力を込める。
確かに、高品質・高機能をうたう高級タオルやブランドタオルから、100円ショップで売られている安価なタオルまで、商品は幅広く、細分化されているが、業界標準と言えるようなものはない。マーケットの真ん中の部分がすっぽりと抜け落ちている。従って、基本的には、個々人が好みのタオルを買い続けているか、毎回違うメーカーやブランドのタオルを買っている状況なのだ。
「“タオル難民”という言葉があるのをご存じですか? 自分にぴったりのタオルを探し続けている人が実に多いのです」
10年以上前、マス向けのタオルがないことに気付いた伊澤社長は、この領域を押さえにいくことに心血を注ぐようになった。
日本と欧米の明確な違い
まずは市場調査するところから始めた。もしかしたら、マス向け商品がないのは日本だけかもしれないと思った伊澤社長は、海外の先進国を一通り見て回った。すると、マス向け商品がないのは欧米でも同じで、消費者が買っているタオルはバラバラだった。
ただし、市販されているタオルに関して、欧米と日本では明らかな違いがあった。