利益優先で飼育環境は二の次になってしまう

松本市のブリーダーはブームに乗ってより多くの利益を得るために、急激に犬の数を増やした可能性があります。飼育スペースを確保するために、ケージを5~6段に積み重ね、複数頭を1つのケージに入れていたのです。そうなれば掃除も行き届かず、倒壊する危険もあります。健康管理もままならないでしょう。

従業員の一人は「犬たちは狭いケージの中で過ごし、運動をさせることもなかった」と話しています。不衛生な狭いケージの中で思うように動けず、散歩にも行けず、犬たちの抱えるストレスは計り知れません。

需要が増えれば、供給も増える。ペットショップで購入する人が増えれば、悪徳ブリーダーは利益を求めて多くの子犬・子猫を産出するために、繁殖犬・繁殖猫を増やしていきます。そして、劣悪な飼育環境でケージの外に出ることも許されず、過酷な日々を過ごすことになるのです。犬や猫を飼いたいと思った時、どこから迎えるかをしっかりと考える必要があります。

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規制強化が期待されるが「13万頭が行き場をなくす」

前述のようなブリーダーは氷山の一角であり、コロナ禍のペットブームの裏にますます増大していると推測できます。しかしながら今後は、環境省の改正動物愛護法に関する「第一種動物取扱業者及び第二種動物取扱業者が取り扱う動物の管理の方法等の基準を定める省令(省令基準)」によって摘発の対象になります。

この省令は「悪質な事業者を排除するために、事業者に対してレッドカードを出しやすい明確な基準とする」「自治体がチェックしやすい統一的な考え方で基準を設定」「議員立法という原点と動物愛護の精神に則った基準とする」というポイントに沿って進められ、今年4月に公布されました。いわゆる「数値規制」です。

全ての項目について2021年6月に施行するとされていましたが、パブリックコメントにはより厳しい規制を求める声があがる一方で、「このままでは廃業をするしかない」と基準の緩和を求める事業者の声が多く寄せられました。あるペットショップチェーンの幹部らは、「廃業するブリーダーが増え、犬や猫が山奥に遺棄される」「行き場を失くす犬や猫は13万頭になる」と反論しました。

こうした意見を踏まえて、環境省は準備期間が必要と判断したいくつかの項目について経過措置を設ける方針を明らかにしました。完全施行は2024年6月に後ろ倒しとなったのです。