新型コロナウイルス禍の巣ごもり需要で、犬や猫をペットとして迎える人が増えている。ペットジャーナリストの阪根美果さんは「ブームに乗じて、劣悪な環境下で繁殖犬や繁殖猫を飼育する悪徳ブリーダーが後を絶たない。国はこうした業者を排除するため規制強化を進めているが、それだけでは解決は期待できない」という——。
空の動物用金属ケージ
写真=iStock.com/chameleonseye
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警察が動物愛護法違反の疑いで家宅捜索

今年9月、約1000頭の犬を劣悪な環境で飼育していたという長野県松本市の繁殖業者(ブリーダー)が、警察の家宅捜索を受けました。健康状態などに問題が生じている犬も多く、一部の犬は保健所に保護されました。狭く不衛生な部屋で繁殖させるなどした動物愛護法違反の疑いがもたれています。

このブリーダーにはさまざまな問題が見られました。保健所への犬の登録数は600頭でしたが、実際には約1000頭の飼育をしていました。ブリーダーとして登録をするには必要な申請書を提出し、その後、飼養施設に不備がないか確認するために自治体の担当者が内見します。問題がなければ営業許可され、5年間有効の「第一種動物取扱業登録証」が公布されます。継続する場合には更新の手続きが必要で、再度内見が入ります。

また、申請内容に変更がある場合には、変更届を出す必要があります。犬の登録数の変更は、変更時から30日以内に提出しなければならないので、このブリーダーは違反をしていたことになります。しかし、5年に満たない間に繁殖犬が約400頭も増加しているのは尋常ではありません。筆者はコロナ禍が影響していると考えています。

ペットブームの裏で増えている「命の軽視」

一般社団法人ペットフード協会の「令和2年全国犬猫飼育実態調査」によると、1年以内の新規飼育者の飼育頭数は犬が46万2000頭(前年度比14%増)、猫が48万3000頭(同16%増)で、共に2019年と比べて増加。増加率もそれ以前の年に比べて大きいことから、コロナ禍の影響がうかがえるとしています。入手先としては、ペットショップでの購入が伸びていて、販売する犬・猫が常に不足。そのため、価格が高騰しています。

また、『「会社四季報」業界地図2022年版』(東洋経済新報社)によると、2019年度のペットフード・ペット用品の国内市場規模は4461億円(前年度比5.5%増)、ペットショップ・医療・保険などを合わせた全体の市場規模は約1兆5000億円とも言われています。

ペットを家族と考える意識が高まる中、コロナ禍による巣ごもり需要が背景となり、まさにペット市場はブームを迎えています。しかしながら、その裏では子犬・子猫を産みだす繁殖犬・繁殖猫への「命の軽視」が増大しているのです。