官房長官の福田康夫役は息子の福田達夫氏(清和会)でどうか。達夫氏は父の内閣で首相秘書官を務め、官邸の事情に精通。当選3回以下の衆院議員90人が参加する「党風一新の会」を立ち上げ派閥政治の打破に動いている。父の康夫氏は安倍氏に批判的なことで知られ、達夫氏の抜擢も「安倍支配からの脱却」のシンボルとなろう。
森喜朗役にあてはまるのは現首相の菅氏と河野氏の派閥の親分である麻生太郎氏だ。小泉氏が森氏に一定の配慮を示して野中氏ら抵抗勢力と分断したように、河野氏は菅・麻生両氏と安倍氏の分断を図ればよい。
安倍支配からの脱却は掛け声だけは実行できない。それを象徴する強力な「目玉政策」と「布陣」が不可欠だ。小泉政権から学ぶべき点である。
安倍・菅政権からの路線転換こそ河野氏に求められる役割だ
最後に大切なことを指摘しておきたい。河野氏が「安倍支配からの脱却」に成功したところで、肝心の経済政策が安倍路線を踏襲すれば、河野政権誕生の歴史的意義は消失するだろう。
原発政策にとどまらず、小泉政権から安倍・菅政権にかけて長期にわたる清和会支配がもたらした格差社会からの転換を打ち出すことが、河野氏に求められる歴史的役割ではないか。
石破氏はかつて小泉構造改革の信奉者だった。安倍氏に干され続ける間に「富の再分配」を重視する経済政策に軸足を移した。安倍・菅政権で要職にありつづけた河野氏は、小泉政権以来の清和会が主導した競争重視の立場を取り続けている。河野政権が誕生しても、貧富の格差を拡大させる自民党政治の潮流が受け継がれるのならば、今回の総裁選は単なる「コップの中の権力闘争」でしかない。
その場合、総裁選後の衆院選は、格差是正を掲げる野党と政権をかけた戦いという構図が強まる。私たち有権者はこの総裁選を単なる「首相レース」に終わらせることなく、自民党が志向する社会像が変わるか否かをしっかりと見極め、衆院選に備えたい。