阪神大震災、地下鉄サリン事件を指揮した國松孝次長官

もうひとり名長官と呼ばれている第16代長官、國松孝次もまた災害、大事件に遭遇した。

長官時代の1995年には阪神・淡路大震災があり、さらに地下鉄サリン事件を始めとする一連のオウム真理教事件が起こった。そのうえ、警察庁長官狙撃事件の被害者となった。3発の銃弾を浴びながらも復帰し、警察トップの威信を守った。普通の人間なら1発でもショック死するところだけれど、彼の場合は気力と体力があったのだろう。殺されずに生き残ったことが警察官全体の士気を高めたと言える。

野地秩嘉『警察庁長官 知られざる警察トップの仕事と素顔』(朝日新書)

「狙撃犯を捕まえられなかったじゃないか」と猛烈な批判を浴びたけれど、死ななかったことが警察の威信を守った。それが第一の勲功ではないか。

ただし、撃たれてしまったことについては、彼と警察組織の不徳だ。同情の余地はない。しかし、狙撃事件以降、警察全体が警護を見直すきっかけとはなった。

彼もまた後藤田正晴と似て、そして、歴代長官の常として、正義感が強い。不羈ふきでもある。

阪神・淡路大震災の時は誰よりも早く現場に姿を現して、現場を督励するとともに被災者を見守った。暴力団対策法を作り、また、被害者救済の道を開いたのも彼だ。

※編集部註:初出時、リードと本文に事実と異なる記載があり、確認の上訂正しました。(9月16日10時45分追記)

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