ちなみに託児所完備は、現在、西側諸国でも家庭政策の一環として進められているが、元はと言えば社会主義国家ご自慢の制度だ。社会主義国では女性の労働力が当てにされていたこともあるが、もっと大きな理由は、子供を早くから国家の意に沿うように教育できるからにほかならない。

CDUの同会派として協働しているCSUは、元来、伝統や家庭を大切にする党なので、CDUの社会主義化にはなかなかついていけず、極端な託児所政策にも、難民の無制限受け入れにもかなり抵抗した。しかし結局、長い物に巻かれた形で現在に至っている。

お互いに批判しても天に唾するだけ

大連立が続くと、野党の言い分は簡単にひねり潰される。そういう意味では、FDPもAfDも、一定の支持者を保ったまま膠着し、その意見はなかなか国政に反映されない。また、メルケル首相の手法は、自分の政策に必ず民主主義、人道、環境という衣を着せるため、異議を唱えると、反民主主義、反人道、反環境のレッテルを貼られそうになり、皆が口をつぐんだ。

その上、連立与党のCDU・CSUとSPDは呉越同舟が長すぎたため、いまさら互いに下手な批判をすると、天に唾する結果となる。メルケル政治の終盤である現在、それらの要素が互いに連携しあい、闊達かったつな議論は行われず、異論を封じ込める体制が出来上がった。

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さて、その間SPDはどうなったか? 脱原発も同性婚合法化も託児所増設も、自分たちの政策は次々とかなえられた。ただ、それらは結果として皆、メルケル氏の手柄となり、そのうちSPDの主張することは尽きた。そして、気がついた時にはフェイドアウト寸前となっていた。

ところが、今、にわかに地面が揺れ始めたのだ。

メルケル氏はSPDの勝利を望んでいる?

引退を間近に控えたメルケル首相は、ラシェット氏という後継者を推したあと、なぜか、知らぬ存ぜぬを決め込んでいる。このままでは、メルケル氏の政界退場と同時に、CDUの下野と、SPDの政権奪還という地殻変動が起こるかもしれない。それを防ぐため、メルケル氏の重い腰が上がるとすれば今しかないが、どうもその気配はない。ベルリンでは、ひょっとするとメルケル氏は、SPDの勝利を望んでいるのではないかという憶測さえ飛び交い始めているという。しかし、なぜ?