国民政党CDUが政権交代の危機に
現在、ドイツでは、CDU/CSU(キリスト教民主・社会同盟)と、SPD(社会民主党)がいわゆる大連立を組んでいる。CDU/CSUというのは連邦議会で統一会派を組む保守勢力。ちなみにCSUはバイエルン州が地盤で、CDUは同州に支部を持たないため、2党で全国をカバーしている。ドイツで「同盟」といえば、この両党のことだ。
そして、今回の選挙には、そのCDU/CSU、SPDの両陣営に、さらに緑の党が加わり、それぞれ首相候補を立てて三つ巴で争っている。ところが、世論調査によるそれぞれの政党の支持率は、4月ごろからまれに見る乱高下。9月2日現在、当初は誰も想像しなかった状態となっている。しかも、この構図が3週間後の投票日まで続くかどうかも分からない。
どんな構図かというと、公共第1放送の世論調査では、まず、CDU/CSUの支持率が、過去最低の20%まで落ち込んだ。CDUは戦後から1990年代までは常に過半数近くを獲得していた国民政党だったことを思えば隔世の感がある。
党の危機だというのに後継者を支援しない
今回の落ち込みは、首相候補者であるCDU党首の、アーミン・ラシェット氏の人気のなさも原因の一つだが、それだけではない。現首相であり、国民の間で人気抜群のメルケル氏が、苦境に陥っているラシェット氏をほとんど支援しない。さらに言うなら、メルケル氏は母家CDUの危機も他人事。選挙の応援には出向きたくないと明確に表明しているらしく、これに関しては、党内でも驚愕と不満が広がっているという。
CDU/CSUの共通の首相候補としては、当初から、CDUの党首ラシェット氏ではなく、統一会派を組むCSUの党首マルクス・ゼーダー氏のほうが良いという意見も根強かったが、CDU幹部の沽券が邪魔をした。今からでも取り替えろという声も聞かれるが、それで挽回するにはいささか遅過ぎる。その上、ラシェット氏が意地でも降りそうにない。
温暖化政策の「緑の党」は一躍急上昇したが…
一方、緑の党は、去年の秋から上昇気流に乗ったかのように支持率を増やし、5月初めには、一瞬といえども首位を奪取。緑の党は、CDU/CSU、SPDの対抗馬としては、若い女性が有利という判断で、政治経験の未熟なアナレーナ・ベアボック氏を首相候補としてぶつけたのだが、これが大成功したかのように見えた。
ところが、ベアボック氏がメディアに絶賛され、次期首相とまで持ち上げられたのは、ほんの一瞬。まもなく経歴詐称やら、寄付金の申告漏れやら、自伝の盗作など、思わぬほこりがたくさん出て人気が急降下。現在、苦戦している。