しかも、緑の党はCO2による地球滅亡説の上にあぐらをかき、過激な温暖化対策を唱えれば国民がついてくると思ったようだが、あにはからんや、過激過ぎて多くの支持者が離脱。そんなわけで現在、緑の党は、CDU/CSU、SPDに次ぐ3位に転落。「ベアボック首相」は水泡に帰した。ただ、連立で与党入りする可能性はまだ十分残っている。
緑の党は党首をおかず、男女のペアが党代表を務めるが、ベアボック氏の片割れがロバート・ハーベック氏。彼なら州政府の大臣の経験も、人望もあるので、ベアボック氏の足元が揺らいだ時、すぐに取り替えろという声もあったが、結局、踏み切れなかった。
緑の党は、人選ミスで首相府を得る最大のチャンスを逃したようだ。
消滅の危機にあったSPDが首位に立つ奇跡
残るSPDは、戦前から続くドイツ最古の由緒ある政党で、過去にはヴィリー・ブラントやヘルムート・シュミット、ゲアハルト・シュレーダーなどといった名首相を輩出している。
このSPDのおかげで、戦後のドイツはCDU/CSUとSPDの堂々たる二大政党制を保てたが、2005年、CDU/CSUと連立するようになって以来、SPDは次第に国民の支持を失い、やがて党が消滅するのではないかと言われるほどに没落した。
ところが今、そのSPDが突然、息を吹き返し、緑の党を追い越したかと思うと、前述のように、CDUまで追い抜かした。ここ10年ぐらいの流れからすれば奇跡に近い。
これは、首相候補であるオラフ・ショルツ氏の人気のせいだが、奇妙なことに、人気の源は、彼が発散しているメルケル色という。国民は、CDUのメルケル氏の後継者として、メルケル首相の下で副首相を務めたSPDのショルツ氏を選んだわけで、まさにパラドックスだ。
ちなみにショルツ氏は、現メルケル政権の財相も務めている。つまり、メディアでの露出も多いし、コロナ給付金を奮発する役目なので国民受けも良い。メルケル政治の安定感にうまく乗っかった感がある。
ドイツ国民は政党や政策で党を選ぶのではなく、人間で選ぶ。今までメルケル氏を支持してCDUに投票した人が、今度はショルツ氏を支持してSPDに投票する可能性はかなり高い。
CDUの内部分裂はメルケル氏が望んだもの?
その他の政党としては、10~11%ぐらいのところに右派のAfD(ドイツのための選択肢)とリベラルのFDP(自民党)がおり、5~6%のところに左派党がいる。ただし、AfDは極右として排除の憂き目に遭っているので、どんな連立になろうとも政権に参加するチャンスはゼロ。一方のFDPは、どんな連立になろうが、与党入りする可能性がある。というか、ドイツは、FDPに入ってもらわないと、どこも過半数が取れないという小党乱立状態なのである。
しかし、そんな状況の中で、一つだけ見えてきたものがある。CDUの没落はホームメイドだということ。