DXの「Xの不備」がシステム障害の根底にある

なぜ、こんな事態に至っているのだろうか。

大手ITベンダーのトップは「システムの問題よりも、みずほの組織体制に問題があるのではないか」とみる。みずほは統合した旧3行出身者が派閥抗争を繰り返してきたが、そうした「旧行意識が今でも上層部には根強く残っている」といい、それが1つのシステムを作り上げるはずだったMINORIの開発にも影を落としている、というのだ。「システム開発責任者にも出身行意識が強くあり、システム設計の思想に溝があった」という。つまり組織体制がシステム設計にも影響しているというのだ。

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今、民間企業や行政機関の間で、DX(デジタル・トランスフォーメーション)が最大の課題になっている。仕事をデジタルに置き換える「D(デジタル化)」だけではなく、仕事の仕方や組織体制を抜本的に変革する「X(トランスフォーメーション)」を同時並行して行うことの重要性が指摘されている。まさに、みずほはこの「X」の不備がシステム障害の根底にあるのではないか、というのである。

10万円の給付金、COCOA、ワクチン接種…システムは日本の「死角」

新型コロナウイルスの蔓延をきっかけに、このDXの重要性を多くの国民が痛感している。30年近くにわたってIT化を進めてきたはずの日本で、なぜこれほどまでにシステム不全が起きるのか、というほどトラブルを目にすることになった。特に昨年は、行政でIT問題が噴出した。2020年4月に当時の安倍晋三首相が決めた、ひとり一律10万円の特別定額給付金を、基礎自治体が配布する役目を担ったが、1カ月たっても給付されない自治体が相次いだ。

また、厚生労働省は新型コロナ感染拡大防止を狙って接触確認アプリ「COCOA」を導入したが、機能しない不具合が発生、ほとんど活用されないまま消えていった。ワクチン接種を巡ってはもともと作った「V-SYS」というシステムがワクチンの配分だけしか管理できず、誰にワクチンを打ったかすら把握できないということで、急遽きゅうきょ「VRS」というシステムを導入。ところが、今度は自治体の入力作業が追いつかないため、正確な接種率が分からないという問題が浮上した。

一方で、オリンピックにやってくる外国人客を管理するアプリ、通称オリパラアプリを開発するのに当初73億円の予算支出を決め大手ベンダーに役所主導で発注していたことが発覚、平井卓也デジタル担当相が調査に乗り出すなど大混乱を極めた。まさにシステムは日本社会の「死角」といっていい存在になっているのだ。