経済的にも軍事的にも中国に依存せざるを得ない

次に、韓国にとって、2019年、韓国の対中(香港を含む)貿易額は約2771億ドルで、対日米貿易額の総額約2112億ドルをはるかに上回り、貿易額全体の26.5%を占めるまでになっている。

その意味で「経済は中国」に依存せざるを得ない。もちろん、韓国としても、米中対立の激化というリスクを見越して、貿易や投資における中国依存を減らそうという試みがないわけではないが、一朝一夕に成し遂げられるものではない。

しかも、韓国にとって中国の存在感は経済面だけに限定されない。北朝鮮の軍事的挑発を抑え、南北の平和共存へと向かうためにも、北朝鮮に最も大きな影響力を持つ中国との関係を良好なものに管理しておくことは何よりも重要である。

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特に、文在寅政権は、非核化をめぐる米朝交渉を仲介することで、北朝鮮の非核化と韓国主導の南北関係改善を進めようとしてきた。このように北朝鮮の行動を変えるためには米中両国の影響力行使が必要だというのが、文在寅政権の基本的な立場である。

さらに、その先にあるのは韓国主導の南北統一であるが、韓国主導の統一が中国の安全保障環境にとって決して不利にはならないと中国を説得するためにも、良好な中韓関係を管理することが必要である。

このように、北朝鮮の軍事的挑発を抑制し、韓国主導の統一を現実のものとするためには、韓国にとって、米中に可能であれば協力してもらうことが重要であった。

したがって、米中対立が激化して、韓国がどちらの側につくのか踏み絵を踏まされるような状況は何としても回避されなければならないと考える。これが「北朝鮮問題は米中」に依存せざるを得ない状況なのである。

米中対立をめぐってすれ違う日韓の思惑

このように考えると、米中対立が適度に存在したほうが日米同盟における日本の比重が高まるので望ましいと考える日本と、米中対立の激化が韓国外交の前提条件の充足を困難にしてしまうと考える韓国、このように日韓の間には、どのような米中関係が望ましいのかに関する乖離が存在するのは間違いない。

日本から見ると、本来であれば、民主主義という価値観を共有し、米国との同盟も共有する韓国が、米中関係に曖昧な姿勢を示すことに苛立ち、さらに疑念を募らせる。韓国から見ると、韓国が回避したい米中対立の激化を日本は望ましいと考えているのではないかと疑念を募らせる。

このようにして、米中関係に関して異なる選好を持つ日韓は、外交的に協力する必要をそれほど感じないということになる。したがって、日韓間に存在する対立争点に関してあえてリスクをとってまで妥協するという選択をしようとはしないことになる。