安易に入学を勧めない理由
一方で、ごく少数ではあるが、移住後にやはり合わなかったと町を出た家族もいるという。宅明教頭はこう話す。
「理由の統計を取っているわけではないですが、大人も子どもも、環境の変化に適応するのが得意な人と、そうでない人がいると思うんです。家族の在り方が変わったことや、学校の在り方にフィットしなかったなど、複合的な要因があると思いますね」
そうしたケースは、コロナ禍で町の出入りができなくなった時期にみられた。桑原氏は、「いくら『通いたい』と言ってくださっても、保護者に大きく負荷がかかるような状態だと幸せにはなれないので、事前の面談では『移住することが最善なのか』ということと、行き来するのは大変だということを伝えたうえで、それでも入学してくださる方にお越しいただいています」と語る。
それでも大日向小への入学希望者は絶えず、2022年度の入学に向けたオンライン説明会には300人以上から申し込みがきているという。
「詰め込み型」から脱却した教育が広がりつつある
2022年4月には、広島県福山市にイエナプランの公立小学校が開校する。大日向小は私立なので、公立小という点が、また違った意味をもつだろう。
長年公立小で教鞭を執ってきた桑原校長は、「イエナプランの取り組みは公立小でも取り入れることは十分可能」と話す。自身も、町立の小中学校のみならず佐久地域の小中学校や高校ともコミュニケーションを図り、互いを参考にし合っているという。
イエナプランに限らず、近年は新しい教育法を取り入れる学校が公立私立ともに増えている。従来の「詰め込み型」ではない教育が、これからの日本でも広がるかもしれない。