――漠然と不安を感じるのではなくて、一つひとつのリスクをちゃんと考えるべき……ということでしょうか。

落合陽一『半歩先を読む思考法』(新潮社)

そうですね。たとえば、日本の大学で教員として働いているときの不安材料って、ひとつは少子化です。少子化は大学の経営にダイレクトに効いてくるわけで、大学は学生以外からマネタイズする方法をたくさん考えないといけない。

そういうことは随分前からわかっているから、企業からお金を入れたりして、大学の収益モデル自体を変えようとしているわけです。

そんなふうに、長期的にこうなっていくだろうなっていう見通しの中で、どう企業を回していくかとか、サービスを提供していくかみたいなことは、それぞれの仕事の中で当然いろいろあって、それに向けて仕込んでいこうよ、と。

上質な知識が、将来を見通す力になる

――いまは新型コロナウイルスの終息時期もまだ見通せませんが……。

たとえば、人類が天然痘ワクチンを作り出してから天然痘が消えるまでって、184年かかっているんですよね。それを考えれば、新型コロナウイルスとの付き合いも、ある程度は長くなるんだろうな、ということがわかる。

一方で、ひとつの国で1日に100万人ワクチンを打つことができるインフラが整うことも、歴史上これまでなかったわけです。つまり、流通とかシステムの適応もかなりスピードアップされているから、予期せぬことへの対応も格段にレベルアップしている。新型コロナというウイルスへの不安より、むしろリスクを管理できていることのほうが、意味は大きいんだろうなって。

「半歩先」を考えるとき、それを意識しているだけで違うんですね。だから、将来を悲観する必要はそれほどないのかなって思います。

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