――普通の社会人は、落合さんのように第一人者の方々に直接、話を聞く機会というのは持ちにくいと思います。

必ずしも、トップの人に会う必要はないと思います。

さっきも話したように、何らかの伝手をたどって、その業界の人と友達になればいいんです。トップじゃなくても知っていることはたくさんありますし、むしろもっと詳しいかもしれない。

自分の立場でアクセスできるいろいろな業界の人と会って、直に話をすることはけっこう重要だと思います。

情報は、浴びるように頭に放り込めばいい

――インプット先の「多様性」と同時に、インプットする情報の「量」も膨大だと思うのですが、情報を整理したり、記憶したりするうえで意識していることはありますか。

特に何も意識していないですし、どんどん忘れてます(笑)。

でも、つどつど記憶の中から掘り出すことが多いですね。そういえば、あの人があの時、こんなことを言ってたな、みたいなことが、必要な時に頭の中から出てくる感じです。

人間、たくさん情報を浴びておけば、案外、覚えていると思うんです。上質な知識が、頭の中に肩ひじ張らない状態で入っていることが一番重要だと思うので、浴びるように頭に放り込んでおいて、ことあるごとに思い出していく。

知識って、将来、何に使うかわからないですからね。

革新と創造性のコンセプト
写真=iStock.com/edge69
※写真はイメージです

――今回の本の中で<過去の自分と対話している>とも書かれていましたが、ご自身の過去の言葉や行動を何度も振り返りながら考えていました。

全然違うことをたくさん並行してやっているので、単純に、自分が過去に何を言ってきたかを忘れちゃうんです。さっきの記憶と同じで、必要に応じて何度も何度も振り返っています。

1日の中で、だいたい朝9時まで作品のことをやって、12時くらいまで会社のことをやり、12時から大学や研究の仕事をして、夕方6時以降はアートをやり、夜9時以降はメディアとか論文とか原稿のことをやって、夜の12時を越えると今度は制作のことを考えている……みたいに、いつも行ったり来たりしてるんです。

将来への不安にどう向き合うべきか

――現在、新型コロナ以前には考えもしなかった事態になり、将来に不安を感じている人がたくさんいると思います。そういった不安にはどう対処したらいいでしょうか。

幸いなことに、日本という国にいると、本質的には、お金がなくなって死ぬことも、命を取られることもほぼないはずですよね。

あとは、世の中のちょっと先のことを考える時に、少し視野が広ければ、リスクっていうのはけっこうわかってくると思うんです。